2014年もあとわずか。2014年に発行された外国債券について振り返ります。あわせて主な通貨国について2015年の経済情勢・金融政策の展望を簡単におさらいしてみます。
まずは2014年の外国債券発行件数ランキング(通貨別)のトップ10です。(なお対象は「社債投資まとめ!」がカバーしている、主要証券で取り扱いされた外国債券です。)
1位.ブラジルレアル(125件)
2位.豪ドル(76件)
3位.ニュージーランドドル(62件)
4位.トルコリラ(57件)
5位.日本円(48件)
6位.アメリカドル(46件)
7位.メキシコペソ(32件)
8位.南アフリカランド(16件)
9位.インドネシアルピア(9件)
10位.インドルピー(8件)
それでは上記のランキングをもとに、2015年に向けて注目の通貨をピックアップします。
ブラジルレアル債券:経済・財政再建の成否は?
2014年に販売された外国債券で最も多かったのはブラジルレアル債券でした。
2014年のブラジルはサッカーW杯開催という歴史的イベントの裏側で、ルセフ大統領の経済政策が失敗しスタグフレーションに近い状態に追い込まれています。
インフレ抑制に向けて中央銀行は利上げを繰り返しており、世界的な歴史的低金利の中でブラジルレアル債券の利回りは比較的高水準でした。
全般的にはあまり好条件と言える社債は少なかったように思いますが、個人投資家には人気があったのかもしれません。
来年は再選を果たしたルセフ大統領のもとで経済・財政再建への道筋をつけることができるのかどうか、ブラジル経済にとっては大きな試練の年になりそうです。
(参考記事:「スタグフレーションに苦しむブラジル」)
豪ドル債券:中国経済の先行きは?
2014年に販売された外国債券で2番目に多かったのは豪ドル債券です。
先進国の中でも比較的高利回りな豪ドル債券は個人投資家にとっても引き続き魅力的な投資対象だったようです。
オーストラリア経済を左右する最大の要因は、何と言っても最大の輸出品である鉄鉱石の世界需要がどうなるか、中でも最大の需要国である中国経済の成長がどうなるかにかかっています。
内需が比較的堅調な一方で、中国経済の先行きには不透明感もあり、オーストラリアの政策金利は当面据え置かれる可能性が高そうです。
高金利通貨の代表である豪ドル債は、外国債券に注目する個人投資家にとっては来年も欠かせない投資対象となりそうです。
(参考記事:「追加緩和で豪ドル安に向かう可能性も? 揺れる豪州の金融政策」)
ニュージーランドドル債券:利上げ再開はあるか?
2014年に販売された外国債券で3番目に多かったのはニュージーランドドル債券です。ニュージーランドは2011年2月のカンタベリー地震からの復興需要もあり、先進国の中でも堅調な経済成長を続けています。
そのためインフレ率抑制のため、先進国の中では最も早く利上げサイクルに入っています。
こうした中でニュージーランドドルは上昇を続け、1ニュージーランドドル=1オーストラリアドルという、歴史上初めての水準に近づこうとしています。
7月以降ニュージーランドは利上げを休止しているため通貨高も一服していますが、2015年に利上げが再スタートするようであれば、あらためて1ニュージーランドドル=1オーストラリアドルを目指す展開になるかもしれません。
(参考記事:「ニュージーランドの利上げ再開は来春か? ニュージーランドドル債券への影響は?」)
トルコリラ債券:インフレとの戦いが続く?
2014年に販売された外国債券で4番目に多かったのはトルコリラ債券です。
トルコリラ債券の発行件数は、上半期の19件に対して下半期は38件と急増しました。これはトルコの金融政策にとって最大のイベントであった8月の大統領選が大きく関係しています。
トルコでは過去10年間にわたり経済成長を続けてきましたが、昨年から大規模な汚職疑惑が巻き起こり通貨安が進みました。その結果インフレ率が上昇、中央銀行は大幅な利上げに踏み切りました。
これに対し、大統領選挙への出馬を表明していたエルドアン首相(当時)が、利上げは経済成長の足かせになるとして反発しました。エルドアン首相からすると、経済成長が停滞すれば自らに対する国民の支持が低下し、大統領選にとってマイナスになってしまうため、中央銀行による利上げは受け入れがたいものでした。
こうしてインフレ抑制のために利上げを続ける中央銀行と、政治的思惑から利下げ圧力を強めるエルドアン首相との対立は、中央銀行の独立性を損なうものだとして、海外のエコノミストなどからは強い批判を受けていました。
8月の大統領選でエルドアン氏が当選した後は、両者の対立がクローズアップされることも少なくなりました。
こうした金融政策の安定によってトルコリラ債券の発行件数が増加したものと考えられます。
一方で、現時点でもトルコのインフレ率は比較的高水準にあり、2015年もトルコの経済・金融政策運営は難しい舵取りが求められそうです。
(参考記事:「トルコが3つの政策金利のうち貸出金利のみ引き下げた理由は?」)
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