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コロナショックと従来型リセッションの根本的な違いとは

発行済 2020-04-23 10:12
更新済 2023-07-09 19:32

銘柄分析・市場分析

コロナショックによってわずか2週間で新規失業保険申請件数は1000万件に上り、失業率は10%を超えていく見込みです。

実体経済的にはリーマンショックを超える悪影響を及ぼしていると言えるコロナショックですが、当時と比較すると金融システムが健全なため、株価もそれほど反応していません。そこで今回は従来型リセッション(=信用収縮)と今回のコロナショックのように実体経済に障害物が生じた時の違いを説明したいと思います。

そのために下の概念図を使用します。

左側は資産価値や収益の期待値を表し、右側は負債価値や負債の負担感を表しており、バランスシートに見立てていますが、説明するためだけのオリジナルの概念なので特に深く考えずにそういうものだと思ってください。

通常の信用拡大局面では上記の様に左側の資産価値、収益の期待値が右側の負債価値、負債の重さを上回っている状態です。

そのため企業は収益を上げるために積極的に借り入れを行い、それを実体経済の何かに投資します。その投資行動によって資産価格は上昇し、事業が拡大、それに伴って雇用拡大、景気拡大が起こります。

このサイクルが資産と負債の拡大をもたらす、信用拡大のサイクルです。

ここで注意して欲しいのは、左側の資産価値や収益の期待値というのは人間が評価するためかなり曖昧で、簡単に変動するのに対し、右側の負債(銀行や社債での借り入れ)は額面でしっかり固定されており、利率も目に見えて分かりやすいという事です。

そのため右側の負債は利息以上の速度で拡大し続けるため、左側の資産価値はそれ以上の速度で拡大しなければなりません。

しかし何かのきっかけで左の資産価値や収益の期待値が小さくなると下の様になります。

上図は経済システム全体で債務超過に陥っているようなものです。

この時、左側の資産価値や収益の期待値が右側の負債価値や負債の重さよりも低いため、企業は借入で投資をしなくなり、極端な場合は銀行から貸し剥がしや追い証(マージンコール)が行われます。

すると借金返済のために、資産が売却され、それによって資産価格は下落、事業縮小により雇用悪化、景気悪化が引き起こされます。

これが資産と負債の両方が縮小していく信用縮小サイクルです。

これを解決するためには左側の資産価値や収益の期待値を上げ、右側の負債の負担を軽くしてやれば最初の概念図に戻る事が出来ます。

FRBの金利の操作は簡単に言うとこれをやっている訳です。初心者の方はFRBのたかだか0.25%の金利の上げ下げに意味があるのか分かっていないかも知れませんが、信用サイクルの方向を決めるとても大きな影響力を持っているのです。

このように信用拡大と信用収縮はまず投資を拡大するか縮小するか金融市場での判断があり、投資の拡大・縮小を通じてあとから実体経済に波及していきます。そして通常それはFRBの金融緩和や金融引き締めによってもたらされます。

一方今回のコロナショックでは左の資産価値や収益の期待が大きく落ち込み、収益の期待値<負債の重さとなっていますが、これは実体経済の問題であり、銀行、経営者としてもコロナが収束すれば投資を再開したいと考えています。実際にFRBの金融支援と政府の財政支援によって銀行が貸し出しを積極的に行っており、信用縮小サイクルになっていません。3/9までのデータですがマネーストック(M2)の伸びは加速しています

信用収縮はFRBの利上げで2018年末にかけてM2の伸びが減速し株価が暴落した時

お金(信用)の量を示すマネーストック(M2)の伸びは3月23日時点で前年比12.5%ととんでもない早さで拡大しています、これは銀行が貸しまくっている証拠であり、信用収縮ではありません。

つまり、通常であれば資産価値、収益の期待値<負債価値、負債の重さとなった時点で信用サイクルは縮小するのですが、拡大でも縮小でもなく止まるという非常に珍しい状態になってます。銀行が返済を猶予してくれ、さらに貸してくれるのであればわざわざ安い値段で資産を投げ売りする必要もありません。借りた金はキャッシュで持っておき、嵐が過ぎ去るのを待つのが経営者としては正しい行動でしょう。

また米国議会が2兆ドルの財政支援を決めてくれたおかげで民間部門は大きな黒字になります。キャッシュが回っていないだけで、キャッシュの量はかなり潤沢だと思われます。特に失業補償される家計部門は収入の落ち込みがオフセットされる一方で、支出が抑えられているため、BSが健全になるのではないかと考えています。

コロナ収束後の株価の見通しとしてはコロナが収束すれば景気が良くなると考える強気派と、雇用悪化によりコロナ収束後も景気が悪化し続けると考える弱気派で分かれると思います。

ところで、金融緩和や財政拡大は車に例えるならアクセルを踏んでいる状態です。何か問題がない限りは信用拡大が起きて景気は加速していきます。

逆に金融引き締めや財政緊縮はブレーキを踏んでいる状態であり、目の前に何もなくても信用収縮により景気は減速していきます。

現在のコロナショックの状況はアクセルを全開に踏んでいるのに、目の前にコロナという障害物があるため止まっている状態です。では障害物が取り除かれたら?アクセルを踏んでいるのだから当然加速するでしょう。

だから私はコロナ収束時が経済活動の底であり、その後は景気も株価も上がると思う強気派です。

信用収縮の怖いところは資産価格の下落が下落を呼び、それがいつ終わるのかも分からない、さらに銀行に返済するために理不尽な価格でも資産を売却せざるをえない事です。

そのため株価は本源的価値を超えて大きく下落します。

信用収縮が起こらずコロナ収束後に収益が元の軌道に戻るのであれば、企業の本源的価値にはほとんど影響を与えません。

例えばPER16倍なら単年度の利益が株価に占める割合は6%程度なので、2020年のEPSが0になっても本質的には6%下がれば十分です。

コロナが終われば信用拡大局面に戻ると考える私からすれば、銘柄によって50%も下落している現在はバーゲンセールと言えます。

しかしながら信用収縮が起きていないのはFRBと政府による支援のおかげです。例えば2兆ドルの財政支援なら米国の年間GDPの10%程度なので1か月分です。経済活動が半減すると考えると2か月はカバーできる計算になります。FRBの支援や追加の財政支援も期待できるため、数か月は大丈夫でしょう。

ですからその数か月の間にコロナを収束させられる薬が見つかるかという問題になります。

薬が無ければ経済活動を再開させてもまた感染拡大の問題が出てきてV字回復出来ず、金融支援、財政支援の賞味期限が切れれば信用収縮に向かってしまうためです。

欧州の例を見ればイタリア、スペインの様に医療崩壊を起こしたとしても30日程度あれば死者数はピークアウトしているため、その後は経済活動を再開できると思いますがそれは弱々しいものになってしまいます。

今のところ有望視されているのは富士フィルムのアビガン(ファビピラビル)、ギリアドのレムデシビル、ノバルティスのヒドロキシクロロキンなどです。

アビガンの詳細は下記ツイートスレッドを見て頂ければと思いますが富士フィルムがフェーズ3の臨床試験中で早くて6月末には結果が得られる見込みです。

またギリアドのレムデシビルは4月中には何かしら出てくる見込みです。

ノバルティスのヒドロキシクロロキンは既にFDAから緊急使用許可を得ていますが、まだデータが不十分な段階です。

以上、信用拡大・縮小の仕組み、現在は信用収縮ではなく信用サイクルが止まっている珍しい状況であること、短期的な景気悪化に対して金融・財政支援で猶予時間がもたらされており薬待ちであることを解説しました。

私はS&P500が2400を割った水準で繰り返し買いを入れ現在はフルインベストメントですが、今後の感染者数ピークアウト、薬の存在によって経済活動の制限が緩和されていく、金融緩和・財政支援によりコロナ収束後の株価バリュエーションが以前より高くなるといったアップサイド要因を期待しています。

今買いポジションを持っている方は少なからず金融市場を安定させることに寄与しています、来年のどこかで報われることになるでしょう。

著者:えす

blog:えすの米国株投資・金融ブログ

Twitter:https://twitter.com/Skabutoushi

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