16日に日銀が金融政策を発表し、政策金利・量的緩和ともに現状維持とした。最後の追加緩和を行なったのは昨年秋で、これで9ヶ月ほど追加の緩和政策を打ち出していない。その理由の1つとして、昨年11月の大統領選以来「トランプ相場」の円安・株高になったため、追加緩和の必要性が薄れたことがある。ただしインフレ率2%の目標達成にはほど遠い。
黒田総裁は16日の会見で、出口戦略について尋ねられても、「具体的に出口の手法や順序を示すのは難しい」と述べて、何もはっきりとしたことは答えなかった。
この答えからわかるように、黒田総裁は出口戦略について現時点で何も考えていない。しかし総裁の任期は5年であり、来年3月には切れる。たとえ今すぐに出口戦略を始めたとしても、来年3月までに完了させるのは難しい。すでに黒田総裁は出口戦略を行なわずに任期満了となるのは確定しているのだ。
日銀はこの後一体どうするつもりなのか?日銀総裁の再任は法的には可能だが、ここ数十年で再任された総裁はいない。ただし今回の場合、黒田総裁以外に異次元緩和を引き継げる人材がいるのかという問題がある。
戦後例を見ない大規模量的緩和政策を開始したはいいものの、完了させることができずに黒田総裁は任期を終える。次に総裁になる者が下手な引き継ぎ方をしたら、自分に責任がかかってくる。このような状況では、総裁になりたがる者がいなくても不思議ではない。
だから黒田総裁の再任という可能性も考えられる。しかし次期総裁が誰になるのかすらまだ議論されていない。壮大な社会実験として始められた異次元緩和も、もはや行き詰まりが見えている。