[フォート・スミス(アーカンソー州) 28日 ロイター] - 米セントルイス地区連銀のブラード総裁は28日、新型コロナウイルスの感染拡大がパンデミック(世界的流行)となり、死亡率が例年のインフルエンザ並みに近づくなら、米連邦準備理事会(FRB)による利下げは「可能性の一つ」と述べた。
ただ、新型ウイルスが収まり、経済的影響は中国が中心で世界的な経済を巡る混乱は一時的にとどまるとみられるため、基本シナリオは金利据え置きとした。
中国以外の経済的影響は「より小規模になるだろう」との見方を示した。
地元の商工会議所向け講演の準備原稿によると、新型ウイルスの死亡率は季節ごとのインフルエンザによる死亡率をはるかに下回っていると指摘。インフルエンザによる死者数は毎年、世界中で数十万人に上るが、保険当局によると新型ウイルスでの死者数は現時点で数千人という。
ブラード総裁は「逆風となるショックから経済を守るために実施されたこれまでの利下げにより」、FRBは現時点で「良い状況にある」と指摘。「FRBは起こり得るショックに対する保険として、昨年すでに利下げを実施している。ショックは起こったが、すでに保険をかけている」とした。
また、世界的な貿易摩擦からの副次的な影響への懸念が昨年の利下げにつながったものの、その懸念は幾分緩和しているとした。
新型ウイルスを巡っては、中国国内での落ち着きを見ると、他国の保健当局による抑制も十分可能という自信を持てると言及。
一方で、投資家や政策当局者は「今日の時点ではまだ低いが、今後数週間、数カ月以内に経済悪化につながるパンデミックに発展する可能性を気に掛けておくことが賢明だ」と語った。
また株価急落の裏側には、安全資産への世界的な逃避があり、米債利回りを低下させていると指摘。結果的に借入コストを低下させるため、利回り低下自体は「米経済成長の強気要因」と述べた。
市場が米利下げをかなり織り込んだとしても、FRBが利下げを実施する必要はないが、政策当局者は3月17─18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)まで市場の動向を注視していくとした。
ブラード総裁は3月のFOMCに向け「先入観を持ちたくない」とした上で、「状況が非常に流動的なのは明らかだ。FOMCの直前まで事象を監視していく。テールリスクに関しても確かに懸念する必要がある」と指摘。ただ「データからは、公衆衛生上の対応を世界中で行い、新型ウイルスを制御することが可能だと示されている。そうなれば、市場価格は反転するだろう。状況が悪化し、米経済に大きな影響が及ぶようなら対応する意向があり、その対応は効果的なものになると思われる。しかし、転機を迎えることが必要だ」とした。
利下げに向けた緊急会合の可能性に関する質問に対しては、新型ウイルスが制御されれば、状況は「非常に迅速に好転する可能性がある」と応じた。
ブラード総裁は今年のFOMCで投票権を持っていない。
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