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香港 抗議の街(2)【中国問題グローバル研究所】

発行済 2019-08-22 17:00
更新済 2019-08-22 17:21
© Reuters.  香港 抗議の街(2)【中国問題グローバル研究所】

【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。

筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。

関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。

考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、フレイザー・ハウイー氏の考察「香港 抗議の街(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。

———香港の状況は複雑で混沌としている。

街のいつもの喧騒と、デモ隊の一部が通り全体をほぼ封鎖して警察の到着を待っている時の水を打ったような静けさと、一方からレンガと火炎瓶が、他方からゴム弾と催涙ガス弾が飛んでくる完全な暴動とが奇妙に入り混じった状態にある。

開通してからまだ1分しか経っていない道路や鉄道が数分のうちに通行止めになって、通勤が悪夢になることもある。

月曜日には、黒シャツを着た平和的なデモ参加者が数千人押し寄せたため、空港が閉鎖された。

彼らは、空港を閉鎖した後、インターネット上のフォーラムで、解散して翌日再び集まることを圧倒的多数で可決した。

香港はカオスに陥っているように見える。

しかし問題は、香港がこれからどのように前に進むか、という点である。

ラム行政長官は民意と完全に乖離していることを露呈しており、今でも忠誠を誓っている中国政府以外、おそらく全員の信頼を失っているようだ。

彼女が行政長官として2期目を迎えることは、決してないだろう。

健康上の理由で辞任するのは時間の問題にすぎないことは確かだが、暴力行為が収まってからになろう。

それよりも重要な点は、警察の残虐行為に関して真の意味で独立した調査を実施する必要があることだ。

警察はとてつもなく大きな圧力を受けているとはいえ、大勢のデモ参加者に対する過剰な行為や暴力の一部については、弁解の余地がない。

8月11日には、包囲した地区の地下鉄の駅構内で警察が催涙ガス弾を発射したことから、交戦規則を調査する必要もあろう。

香港でこのようなスタイルの騒乱を目撃することは滅多にないので、警察側の経験不足が一因になったに相違ないが、信頼を回復する術は調査だけである。

ユンロン(元朗)区で白シャツを着た暴徒が一般市民を襲撃した際、警察が出動せず通報にも対応しなかった件は、しばしばアジアで最も優れた警察と見なされる組織にとって、非常に不都合な告発事例である。

開かれた誠実な調査が行われるならば、警察にとっても非常に有益であろう。

デモ隊側は、要求の一部を緩和する必要があるだろう。

デモ参加者を起訴しない、すなわち、彼らのデモを暴動とみなさない、という包括的な要求は、特に数週間経った今、的外れに思える。

しかし、抗議グループには明確な指導者がおらず、それが日々の警察とのいたちごっこで流動性をもたらしている反面、要求、妥協、今後の行方に関する協議に実際に関与する人が存在しないことを意味する。

警察官は法を執行するが、それ以上のものではないし、黄色のヘルメットをかぶって黒いTシャツを着ていても、起訴されることはない。

どちらの側にとっても、このような説明が必要だ。

香港が前に進むには、2014年の「占拠せよ」運動の失敗が、平和的なものであれ暴力的なものであれ、今回の「逃亡犯条例改正案」に反対する抗議行動を支える怒りに如何にして繋がったかを、香港政府が傾聴し理解することが不可欠である。

政府の譲歩に関しては何ら実質的なものが提示されておらず、香港市民の要求を進んで受け入れる姿勢も一切見せていないので、憤りと怒りが膨らむ一方になって、次はかなり極端な反応を示すおそれがあろう。

香港にとって潜在的な懸念は、「中国政府が戦車を送り込む」事態に発展することだろう。

香港特別行政区立法会議事堂の隣に既に人民解放軍の駐屯地が設けられているが、あらゆる兆候が、軍隊がデモ鎮圧に配備される可能性は非常に低いと示している。

それでも香港内外の観測筋は、直接的にせよ間接的にせよ、香港を支配するという中国政府の決意を疑うべきではなかろう。

香港の独立が可能だと考えている人は思い違いをしていて、危険な一歩を踏み出していると言えよう。

中国には問題や弱点があるかもしれないが、中央政府が崩壊寸前というわけではない。

香港は小さく、中国政府にとって頭痛の種かもしれないが、香港の好きにさせることはあるまい。

チベット、新疆ウイグル自治区、台湾、香港のいずれかを問わず、これまでも中国政府は周縁地域と常にもめてきた。

強い意志を持った歴代の行政長官が、中国政府に抵抗し香港市民を支持する体制を整え、かつ一国二制度の遵守を中国政府に徹底させる、今よりも強い国際的な圧力が以前からかかっていたならば、今日の香港は全く異なる様相を呈していた可能性もあるが、たられば話をしていても今やほとんど役に立たない。

香港市民は、再び一つにまとまる方法を見つける必要があるだろう。

それは、起きた事柄に目をつむるためではなく、起きた事柄に向き合って、香港をこれほどユニークな場所にしている要因を大事にしながら前に進む方法を見出すためである。

今は中国社会が中国史上最も大きな成功を収めている時と言えるだろうが、未来はかなり不透明な模様だ。

無論、今後の道のりは定かではないが、香港の崩壊を早めるのではなく、過去2か月間の抗議行動、混乱、暴力行為を背景に、香港政府が、市民との溝を埋めると同時に対中国政府関係の再調整を余儀なくされる可能性はまだ残っていよう。

※1:中国問題グローバル研究所https://grici.or.jp/この評論は8月13日に執筆

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