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ボーイング株は長期的には回復するだろう。しかし、今は買い入れ時ではない

発行済 2019-03-22 16:58
更新済 2020-09-02 15:05
BA
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航空機製造メーカ世界最大手のボーイング(Boeing) (NYSE:BA)は、自社で最も期待されていた737 MAX型機が2度の航空機事故を引き起こし、過去の歴史上で最悪の事態によろめいている。同小型機は、同社が競争戦略の一翼を担っていた。

しかし、5ヶ月間で2度の墜落事故が発生し、同機材の使用禁止措置が取られるとともに、安全対策への調査が開始されたことで、同社の成長戦略は打ち止めとならざるを得ないだろう。投資家は、同社への風評被害の度合いや財務的な見通しについて注目している。

ボーイングと米国経済への代償はかなり大きい。1960年代に導入された737型機は航空業界で最も導入されたモデルであり、ボーイングの利益を牽引してきた。ブルームバーグデータによると、既に販売されたものを含め、最新のMAX型は5000機の発注(6000億ドル相当)を受けた。

737 MAX型機の発注による預かり金が下支えとなり、昨年度の同社の売上高は初めて1000億ドルを上回った。そして時価総額も2500億ドルを上回っている。この時価総額は、昨年10月に発生したライオン航空機の事故後と3月10日に発生したエチオピア航空機の事故前の数値である。

ゴールドマン・サックスの調査によると、737 MAX型機は同社の売上高、EBITを大きく牽引しており、今後5年間で同社全体のEBITの45%を占める可能性があるという。

中国市場でのリスク

ブルームバーグの発表によると、1月の中国でのMAX型機の販売数は20%を占めており、中国政府は米国との貿易合意の一環として購入する米国輸入製品からMAX型機を除外することを検討している。仮に他国や航空会社でもこういった動きを取った場合、ボーイングのキャッシュフローに影響を及ぼし、成長戦略に支障をきたす可能性がある。

複数のアナリストはMAX型機の事故による同社への影響について、短期的と長期的の観点で分かれている。しかし、2019年は同社が不振に陥るとは考えにくく、悪影響の多くはダメージコントロールによって緩和されるだろう。クレディ・スイスによると、一連のネガティブ要素によって同社のキャッシュフローは37億ドルの減少、またはキャッシュフローの4分の1の減少となるかもしないと予想する。

Edward Jonesのアナリストは、2つの事故による追加的なコストが発生し、MAX型機の発注が鈍化することで、ボーイングの収益はさらに減少すると発言した。

「長期的な見通しとしては、787型機といった他の航空機による収益や直近の防衛策、サービス事業の拡大によって、今回のダメージは相殺されると我々は考えている。とりわけ、株価は正当に評価されていると考えられる」と、Edward Jonesのアナリストのジェフ・ウィンドウ氏は投資家に対してのコメントで発表した。

ボーイング株は3月10日の事故以前で33%上昇しており、事故発生以降に約11%下落した。投資家心理の悪化とともに、同社の売上高への不確実性が表れている。

ボーイング 週足チャート

同社はMAX型機の発注、生産中止、ソフトウェアの欠陥を修正することでしか短期的なダメージを逃れることはできないと我々は考えている。そして、同社株が割安でない時期に今回の航空機事故が発生している。同社の時価総額は2016年の1000億ドルから今日の2110億ドルまで急上昇している。直近の株価の下落があった後でも、PER(株価収益率)は21倍の水準で取引されている。現在のPERは、過去5年間の平均PERと同様の水準となっている。

今後、財務的なコストの規模に関する情報や、多くの使用規制によるネガティブ要素が公表されることで、株価の下方圧力は引き続くと我々は考えている。

要点

ボーイング株は長期的には、今回の事故による下落から回復を遂げるだろう。各航空会社に選択の余地はなく、ボーイング、エアバスのどちらかの機材を利用することになる。それゆえ、市場では同社の長期的な競争優位性を高く評価しており、ボーイング株は未だ年初来18%高となっているのだ。しかし、今回の下落局面はすぐには止まらないだろう。同社株の割安感にあやかる時期はまだ来ていないと考えられる。

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