エレン ワルド | 2019年12月20日 17:23
※この記事は12月19日に投稿された記事です。
原油トレーダーにとって念頭に置かないといけないのは、いわゆるスイングプロデューサー(原油価格を操作できる力を持つ産油国)の存在だろう。
スイングプロデューサーが原油価格を操作するには、市場の原油を過剰供給・供給不足にしたり、また少なくとも機関投資家に市場の供給量を操作をしている印象を与える必要があるだろう。また、スイングプロデューサーのプレゼンスを増すためには、他に原油市場を動かすプレーヤーがいない事も重要だ。
しかしながら、現在スイングプロデューサーに値する存在はいないと言っていい状況である。以下で、その理由を述べる。
サウジアラビアはスイングプロデューサーに最も近い存在と言っていいだろう。現在では、サウジアラビアの原油生産量は、協調減産下で日量1000万バレルに押さえられている。
サウジは本来日量1200万バレルの生産能力を持っている。この生産能力の増加は世界の原油価格を下落させる要因になるだろう。
しかしながら、OPECの協調減産体制の中でサウジが積極的に生産量を増やすことはないだろう。サウジは緊急事のための十分な石油量を確保や、また供給量の増加による原油価格の下落を防ぐためにも、増産を望んでいないだろう。だが、どこかのタイミングでサウジアラムコ (SE:2222) の利益成長のためにサウジは心変わりする可能性はある。
現在のところ、サウジが原油価格を引き上げる能力はないと言っていい。サウジは、短期的に利益をあげることに対して必死ではない上で、他の産油国に対し減産の姿勢を見せる必要があるポジションである。しかし、サウジが原油価格引き上げのために大幅な減産努力しても、米国、ブラジル、ノルウェー、またカナダなどの産油国がその減産分を埋め合わせるだけの力を持っている。 さらにOPECプラスのは協調減産ノルマを無視し、過剰生産している国々も見られる。
近年でスイングプロデューサーとして名を連ねることができる国があるとしたら米国だろう。米国は現在世界最大の原油生産国となっており、11月では日量1280万バレル生産していた。
ただし米国の場合は、原油の供給量を操作しようとした場合は反トラスト法(独占禁止法)に引っかかってしまうため、そのようなことはできない。
同じ経済状況下の反応として、米国の石油企業郡は協調体制を取っているように見えることもあるが、あくまでも個々の企業の意思であり、スイングプロデューサーとしては機能してはいない。
世界の総石油生産量は、日量約1億万バレルの水準となっている。この量からの大幅な増加や減少は、原油価格に影響があるだろう。
現在の原油トレーダーはある特定の国の動向に焦点を当てるより、原油市場の値動きや経済全体の視点での変化に注目するべきと考えられる。
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