えす | 2020年04月23日 10:12
コロナショックによってわずか2週間で新規失業保険申請件数は1000万件に上り、失業率は10%を超えていく見込みです。
実体経済的にはリーマンショックを超える悪影響を及ぼしていると言えるコロナショックですが、当時と比較すると金融システムが健全なため、株価もそれほど反応していません。そこで今回は従来型リセッション(=信用収縮)と今回のコロナショックのように実体経済に障害物が生じた時の違いを説明したいと思います。
そのために下の概念図を使用します。
左側は資産価値や収益の期待値を表し、右側は負債価値や負債の負担感を表しており、バランスシートに見立てていますが、説明するためだけのオリジナルの概念なので特に深く考えずにそういうものだと思ってください。
通常の信用拡大局面では上記の様に左側の資産価値、収益の期待値が右側の負債価値、負債の重さを上回っている状態です。
そのため企業は収益を上げるために積極的に借り入れを行い、それを実体経済の何かに投資します。その投資行動によって資産価格は上昇し、事業が拡大、それに伴って雇用拡大、景気拡大が起こります。
このサイクルが資産と負債の拡大をもたらす、信用拡大のサイクルです。
ここで注意して欲しいのは、左側の資産価値や収益の期待値というのは人間が評価するためかなり曖昧で、簡単に変動するのに対し、右側の負債(銀行や社債での借り入れ)は額面でしっかり固定されており、利率も目に見えて分かりやすいという事です。
そのため右側の負債は利息以上の速度で拡大し続けるため、左側の資産価値はそれ以上の速度で拡大しなければなりません。
しかし何かのきっかけで左の資産価値や収益の期待値が小さくなると下の様になります。
上図は経済システム全体で債務超過に陥っているようなものです。
この時、左側の資産価値や収益の期待値が右側の負債価値や負債の重さよりも低いため、企業は借入で投資をしなくなり、極端な場合は銀行から貸し剥がしや追い証(マージンコール)が行われます。
すると借金返済のために、資産が売却され、それによって資産価格は下落、事業縮小により雇用悪化、景気悪化が引き起こされます。
これが資産と負債の両方が縮小していく信用縮小サイクルです。
これを解決するためには左側の資産価値や収益の期待値を上げ、右側の負債の負担を軽くしてやれば最初の概念図に戻る事が出来ます。
FRBの金利の操作は簡単に言うとこれをやっている訳です。初心者の方はFRBのたかだか0.25%の金利の上げ下げに意味があるのか分かっていないかも知れませんが、信用サイクルの方向を決めるとても大きな影響力を持っているのです。
このように信用拡大と信用収縮はまず投資を拡大するか縮小するか金融市場での判断があり、投資の拡大・縮小を通じてあとから実体経済に波及していきます。そして通常それはFRBの金融緩和や金融引き締めによってもたらされます。
一方今回のコロナショックでは左の資産価値や収益の期待が大きく落ち込み、収益の期待値<負債の重さとなっていますが、これは実体経済の問題であり、銀行、経営者としてもコロナが収束すれば投資を再開したいと考えています。実際にFRBの金融支援と政府の財政支援によって銀行が貸し出しを積極的に行っており、信用縮小サイクルになっていません。3/9までのデータですがマネーストック(M2)の伸びは加速しています
信用収縮はFRBの利上げで2018年末にかけてM2の伸びが減速し株価が暴落した時
ノバルティスのヒドロキシクロロキンは既にFDAから緊急使用許可を得ていますが、まだデータが不十分な段階です。
以上、信用拡大・縮小の仕組み、現在は信用収縮ではなく信用サイクルが止まっている珍しい状況であること、短期的な景気悪化に対して金融・財政支援で猶予時間がもたらされており薬待ちであることを解説しました。
私はS&P500が2400を割った水準で繰り返し買いを入れ現在はフルインベストメントですが、今後の感染者数ピークアウト、薬の存在によって経済活動の制限が緩和されていく、金融緩和・財政支援によりコロナ収束後の株価バリュエーションが以前より高くなるといったアップサイド要因を期待しています。
今買いポジションを持っている方は少なからず金融市場を安定させることに寄与しています、来年のどこかで報われることになるでしょう。
著者:えす
blog:えすの米国株投資・金融ブログ
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