YUTA | 2020年06月16日 11:44
6月11日に米国株は7%近く下落し、1日の下落幅の1862ポイントは歴代4位を記録しました。
メディアでは米国株の下落の背景には新型コロナの第2波への懸念があったと報道があったので、このブログでもアメリカで感染が拡大している州の様子を見ていきました。
ただし、注意深く中央銀行FRBや、世の中のお金の動きを観察してみると、新型コロナウイルスへの警戒心だけが株の大きな下落ではない気もします。
最近のFRBの資産の増加ペースはかなり緩やかになっており、その影響なのか世の中にある現金(ドル)も伸びが止まっています。
3月以降の米国株は世の中のマネーがあふれて、その一部が株に流れることで株高になっていましたが、この流れは一服した恐れがあります。
この記事のポイント
2020年3月に大幅下落した米国株は最近まで急速に株価を回復させていましたが、その要因を一言で言うと「強力な景気刺激策で世の中に溢れたマネーの一部が株式市場に向かったから」だと思っています。
新型コロナの危機で米国株は時価総額にして7兆ドルが一時期失われました。
しかし、FRBは3兆ドル分以上の債権を市場から買い取って資金を供給し、アメリカ政府は景気支援で3兆ドルを世の中にお金を提供して、世の中をドルでいっぱいにしたことで株に資金が戻り、米国株は株価を戻していました。
ただし、米国株を押し上げる原動力になっていたはずのFRBの債権購入も、最近では規模がかなり縮小されています。
大量の債権を購入していればFRBの資産は増加するはずなのですが、FRBの毎週の資産額の変化を見てみると、その増加ペースは顕著に落ちています。
今までは世の中にあふれたドルが株価を支えていましたが、その大きな力を担っていたFRBは既に手を緩めています。また、アメリカ政府の巨大な財政政策もその多くは既に実施されたようで、世の中のマネーの総量は伸び悩んでいます。
こうした世の中の変化・異変に債権投資家は気づいていたのかも知れません。
米国株が下落した6月11日よりもわずかに早く、米国債は買われて利回りが低下していました。
いつも債権投資家が株式投資家よりも早く異変に気づくとは言いませんが、リスク回避の姿勢が強い債権投資家だからこそ、株式投資家よりも先に変化を感じ取っていたのかも知れません。
米国株はFRBと米政府の刺激策の影響で世の中にドルが溢れて、その一部が株にまわって株価が上昇したものの、その株価上昇の要因は既に失われつつあるという話をしてきました。
株価的は短期的にはマイナスの影響がある状況だと思います。ただし、心配はしていません。米政府とFRBで2-3年の時間をかけて景気刺激策を繰り返せば、いずれ脱出できる低迷だと思っているからです。
今後さらに株高になるためには、企業の利益が回復するか、もしくは再度カネあまりの状況を作るためにさらなる刺激策が必要な気がします。
理想的には落ち込んだ米国企業の利益が上昇することです。しかし、新型コロナウイルスの再流行を防ぎながら企業の業績を回復させるのは難しく、企業利益の回復にはしばらく時間がかかりそうです。
なので、企業の業績が元に戻ると言われている2022年頃まで、米政府は景気刺激策を追加で発動したり、FRBも仕方なく国債などの債券購入額を増やさざるを得ない展開になると思います。
問題は景気が回復した後
問題は景気の低迷ではなく、むしろ景気回復した後の過熱だと思っています。FRBも米政府も大量のドルを世の中に供給したので、ドルの価値が落ちるインフレが発生する土壌が出来上がりつつあります。
2-3年でアメリカ経済が元通りになったら、次に心配するのは大量にドルが溢れる中、企業の業績が回復を遂げて、インフレ率は理想とする2%を超えて上昇する恐れがあると思っています。
米国株の研究で有名なジェレミー・シーゲル教授は、次の景気拡大期にアメリカのインフレ率は4-5%まで上がりうると言っていますが、もしもこのインフレ率が現実のものになると30年ぶりの高水準です。
高いインフレ率を抑えるためには、株高を作ってきた低金利政策をやめて、金利を引き上げなければならなくなり、株高の時代は一休みする恐れがあります。
私個人の見解
私は短期的には大きな下落があっても耐えしのいで、2-3年後の景気回復期で予想される株高の波に乗りたいと思っています。
一方で、この株高に過熱感や急なインフレ率上昇が見られたら、株の比率を下げて次の時代に有利になる金や商品などに資産に一部をシフトさせるつもりです。
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