YUTA | 2020年07月07日 11:45
2020年3月から7月にかけて米国株の価格が上がっている理由の1つに、米政府と中央銀行FRBがたくさんのドルを市場と経済に提供していた背景があると説明してきました。
ただし、もっと広い視野で米国株以外の資産の動きを見てみると、ゴールドや原油だけでなく、ユーロやオーストラリアドルなどの通貨も含めてあらゆる資産が2020年3月以降でドルに対して値上がりしているのがわかります。
ここまで幅広い分野で資産がドルに対して上昇しているように見えると、それぞれの資産の価値が上昇しているのではなく、ドルが下落しているようにも見えます。
2020年3月以降の資産価格の上昇の背景には、通貨安があるのかなと考えてしまいます。
この記事のポイント
ドル円の為替だけしか見ていないとなかなか気づけないのですが、3月後半からドルはあらゆる通貨に対して、安くなっているように見えます。
ユーロ・オーストラリアドル・ニュージーランドドルのドルに対する価格をグラフで見てみると、どの通貨も価格が上昇していて、ドルが安くなっていることがわかります。
複数の通貨を見比べなくても、ドルの強さを表す「ドルインデックス」を下のグラフで見てみると、3月後半から下落しているので、ここでもやはりドルが安くなっていることがわかります。
ドル安の動きと連動するようにあらゆる資産も、2020年3月以降に価格が上昇傾向にあります。
ドル安を背景にS&P500が上昇
ドル安を背景にゴールドも上昇
ドル安を背景に原油も上昇
WTI原油価格だけは上昇のタイミングが1ヶ月ほど遅いですが、米国株もゴールドもドル安が起こった3月末以降に上昇しています。
これだけ多くの資産の価値が一様に上昇を見せる理由は何でしょうか。
大量に供給されて借りやすくなったドルを使ってヘッジファンドがあらゆる資産を購入する動き(ドルキャリー・トレード)をあるかも知れません。もしくは、資産の価値が上昇したというよりは、価格を図るものさしのドルが安くなって、資産の価格が上昇したように見えている可能性もあります。
いずれにしろ相対的にあらゆる資産に対して現金としてのドルは安くなっているようです。
思い返すと、投資家のレイ・ダリオはこの状況を予言していたようにも見えます。2020年の年初から、米ドルの現金は他の資産に比べてやすくなり、価値が失われていくと発言していました。
ダリオ氏、「現金はごみ」と再度主張-リフレ時にはマイナスリターン(ブルームバーグ)
長くなってきたので、ここまで話を一旦まとめます。
今までこのブログでは、20年3月以降の株高は米政府やFRBが大量に供給したマネーの一部が株式市場に流れ込んだことが原因だと考えてきました。
しかし、より広範囲に資産の価格の変化を見てみると、株以外のあらゆる資産が上昇していて、なおかつドル以外の他通貨も上昇しているので、通貨安(ドル安)の影響で資産価格が上昇して見えている影響がある気がしてきました。
ただ、溢れるマネーの流入でも、通貨安でも、原因はおそらく米政府とFRBが大量に供給しているドルで間違いないと思います。
今後も少なくとも1-2年はアメリカ経済は苦境で、大量のドルを供給する景気刺激策は続くはずなので、長期的にはあらゆる資産価格はあがるのだと思います。
長期は強気、短期は弱気
ただ、短期的にはちょっと注意していることが2つあります。
毎週報告されているFRB資産額の推移を見てみると、直近で3週間連続で減少しています。今までFRBが市場から大量に資産を購入して、資金を供給してきた流れが弱まっているのを感じます。
アメリカの景気の悪化の傾向が見られたら、FRBは再度資産の購入ペースを上げるのでしょうが、やや心配な材料です。
また、新型コロナウイルスはアメリカで有効なワクチンが国民に行き渡るまでに、もう一度大きな感染拡大と都市封鎖の流れが来そうです。この記事を書いている7月3日時点で、連日のように新規感染者数が更新されているを見る限り、甚大な影響は不可避だと思います。
再度アメリカの多くの州で都市封鎖が起これば、投資していた資産を売って資金を引き上げる動きが起こるかもしれません。
やはり、私は相変わらず長期の米国株は強気、短期(数ヶ月)は弱気です。
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