YUTA | 2020年08月11日 15:25
ウォルト・ディズニー (NYSE:DIS)の2020年4-6月期の決算は悪かったです。収益は予想を超えて前年比42%減少して、利益は赤字に転落しています。
しかし、決算発表後に株価は5%以上も上昇しました。
動画ストリーミングサービスDisney+の加入者数が2024年達成目標だった6000万を既に達成し、さらに新しい動画ストリーミングサービスも明らかにしたことを投資家は好感した、とメディアでは伝えられています。
しかし、個人的にはこの上昇理由はやや説明不足だと思います。ディズニーの決算がボロボロだったにも関わらず決算発表後に株価が上昇した本当の理由は、ヒットしたDisney+のアプリを使ってどうやってさらに儲けるかのアイディアを投資家に見せたからだと思っています。
この記事のポイント
動画ストリーミングサービスのDisney+はかなりヒットしていると言えますが、ユーザー数ではネットフリックスの3分の1、単価は2分の1しかなく、売上の大きなウォルト・ディズニー社を支えるには規模が小さいと前期の決算まで考えていました。
しかし、Disney+のアプリから特別料金を支払えばワンクリックで追加コンテンツが見れるようになるのであれば、ヘビーユーザからさらに収益を得られることが具体的に見えてきました。
Disney+の加入者数の増加のニュースだけではなく、収益の引き上げ方を投資家に示したことで、投資家はDisney+の将来性を高く評価して株価が上がったように思います。
2020年4-6月期の業績は、収益も利益もとても悪かったです。
ディズニーのテーマパーク事業と映画事業がともに新型コロナウイルスの影響を強く受けたため、世界中で売上が急減速しました。
単位:10億ドル | 3Q20 | 前年比 |
---|---|---|
収益 | $11.8B | -42% |
営業収益 | $1.1B | -72% |
純利益 | -$4.7B | -430% |
調整後一株利益 | $0.1B | -94% |
業績が減速した様子は、グラフを見ればすぐにわかります。
既に1-3月期(2020年Q2)の時点で大きな利益の低迷が見られていましたが、今期の業績の悪化はそれを上回る内容でした。
新型コロナウイルスの影響で、テーマパーク事業と映画事業が低迷したと話をしましたが、ここからは具体的な数字で低迷を確認していきます。
ディズニー社の各部門の業績を見ていきますが、その前に部門名をおさらいしておきます。
ディズニーの部門
少しわかりにくいのは「DTC(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」ですが、この中には今のウォルト・ディズニー社が力を入れている動画サービスの売上が含まれています。
今期の業績は、好調なDisney+を含むDTC部門以外は、全て前年の収益を下回る結果になりました。
売上(単位:10億ドル) | 3Q20 | 構成比 | 前年比 |
---|---|---|---|
メディア | $6.6B | 56% | -2% |
パーク&グッズ | $1.0B | 8% | -85% |
スタジオエンタメ | $1.7B | 15% | -55% |
DTC&海外 | $4.0B | 34% | +2% |
その他 | -$1.5B | -13% | -100% |
合計 | $11.8B | 100% | -42% |
世界中のテーマパークの閉鎖の影響を受けてパーク&グッズは前年比マイナス85%、映画館の閉鎖でスタジオエンターテイメントはマイナス55%と大きく落ち込こんでいます。
2013年からこの株を保有していますが、これほど大きな低迷をみたのは初めてです。
この決算で明るい材料があったとすれば、近年ディズニーが力を入れている動画ストリーミングサービス(DTC部門)についてでした。
動画ストリーミングに関する情報公開
新ストリーミングサービスの情報はかなり限られるのですが、フォックステレビ、ABCスタジオ、FX、フリーフォーム、20世紀スタジオ、サーチライトなどのコンテンツを配信する予定だそうです。
ディズニーは既にDisney+、EPSN+、Huluの3つのストリーミングサービスを持っていますが、4つ目のサービスを立ち上げることになりそうです。
この決算で、ディズニーは面白いアイディアを発表しています。
映画館での上映が延期されていた実写版ムーランは、一部の地域では映画上映もしつつ、今回限りの対応としてDisney+のアプリから追加料金(29.99ドル)を払うことで見れるようにすると言います。
ムーランの動画1つで追加料金約30ドルはかなり割高なので、恐らくプレミアムユーザが見れるようになるのはこの映画1つだけではなさそうです。詳細は今後発表になるはずです。
今までネットフリックスなどは定額制料金を支払えばどんな映像コンテンツも見放題でしたが、Disney+は一般ユーザ向けの低価格プランと、プレミアムユーザ向けのコンテンツも用意して追加料金をとる取り組みを試すようです。
ディズニーの動画ストリーミングサービスの戦略
決算発表ではモルガン・スタンレーのアナリストが「これは今までの定額制動画サービスにはない、実に興味深いアイディアだ」と言って詳細を求める質問が飛ぶなど、注目を集めています。
このブログでも過去のディズニーの決算記事で、Disney+は価格が安すぎてこのままでは目標の6000万〜9000万加入を実現したところで、ディズニー社の収益の10%分にしかならないと問題を提起していました。
こうしたDisney+の収益性の懸念に対するディズニーの回答が、今回1つ示された形になっています。
ボブ・チャペックCEOも「ディズニーが持っているプラットフォームだから試せる」と言っている通り、今回のプレミアムアクセスは試験的な側面もありますが、試す価値は十分にあると思います。
投資家は早くもDisney+の収益性向上に期待して、決算後に株価が上がったのではないかと考えています。
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