月次レビュー:11月の株式市場は月末にかけて下落。ただし2021年年初来でみると引き続き堅調

 | 2021年12月02日 08:34

11月月初は良好な市場環境で取引を開始。10月は本年最も高いパフォーマンスを記録していた。

FRBは金融政策の「正常化」へと準備を進めており、来年には利上げが予想されている一方で、金利は引き続き低位で推移していた。新規失業保険申請件数は減少し、平均時給は上昇基調を続け、雇用統計は良好な結果を示していた。

株式市場は最高値に近づく展開となり、NASDAQ 100指数は11月19日に月初来4.6%上昇した。

月中に入るとガソリン価格や食料品価格の上昇、住宅価格の高騰など、インフレに対する懸念が株式市場での重しとなった。加えて先週金曜日にはオミクロン株と呼ばれる新たなコロナウイルスの変異株も出現し、市場急落の引き金となった。

オミクロン株への懸念が早期金融緩和縮小に影響/h2

今週火曜日も下落し、当月の取引を終了した。

月曜日にFinancial Timesの取材でモデルナ社(NASDAQ:MRNA) CEOのStéphane Bancel氏が、既存のワクチンはオミクロン株に対して効果が弱い可能性があると発言したことで、株価には下落圧力がかかる展開となった。月曜日は堅調に推移したものの、投資家間ではリスク・オフ・モードが再燃した。

しかし、より大きなカタリストとしてはFRBのパウエル議長の発言が挙げられる。火曜日の上院銀行委員会にてFRBはインフレ抑制への対応をする必要があり、これまでの想定よりも最初の利上げを早期に行う必要性を示唆した。

このような状況を受けて、昨日も市場は下落した。月を通してみると、月末の下落によって、 ダウ平均株価およびS&P 500種指数は 11月中旬までの上昇分を相殺する展開となり、 NASDAQ総合指数およびNASDAQ 100は上昇分の大部分が解消された。

ただし、11月までの年初来の株式市場のパフォーマンスは非常に良好であった。S&P 500種指数は年初来21.6%、ダウ平均株価は12.7%、NASDAQは20.6%、NASDAQ 100は25.2%それぞれ上昇している。

先週金曜日からみられている売り圧力の背景には下記のような不透明感が意識されている。

1.オミクロン株の危険性および既存のワクチンの有効性に関する不透明感。投資家はクルーズ船株や航空株など旅行関連株に対して弱気見通しを有していることが確認できる。