ダウ工業株30種平均の構成銘柄であるSalesforce.com (NYSE:CRM)の投資家にとって今年は良い年になった。同社株価は267.04ドル前後で取引され、年初来で20.9％以上値上がりしている。これに対し、Dow Jones US Software Indexは34.6%のリターンを記録。また、ダウ工業株平均は16.8%の上昇だ。
セールスフォースの株価は、11月9日に311.75ドルの過去最高値に達した。しかし、それ以降はベアが優勢となり、同社株は約15％反落する展開となった。株価の52週間のレンジは、201.51ドル～311.75ドルで、同社の時価総額は2,065億ドルである。
セールスフォースは、SaaS（Software-as-a-Service）アプリケーション（Webベースのソフトウェア、オンデマンド・ソフトウェア、ホスト型ソフトウェアなど）の分野で最も重要な企業の一つとして知られている。
Salesforce社のように安定した継続的な収益源となるSaaSのビジネス・モデルを投資家は高く評価している。約15万社の企業がSalesforceのサービスを利用している。
最近の指標によると、
「世界のSaaS（Software as a Service）の市場規模は、2020年の1,582億ドルから2026年には3,073億ドルに達すると予測されており、2020-2026年の年平均成長率は11.7%となっている。」
11月30日、セールスフォースは2022年会計年度の第3四半期の決算を発表した。売上高は68.6億ドルで、前年同期比27％増、調整後の1株当たり利益（EPS）は1.27ドルであった。現金および有価証券の保有は、当四半期末時点で93.9億ドルとなったようだ。
この結果について、CEOのMarc Benioffは次のように述べている。
「当四半期も驚異的な業績を達成し、力強い収益成長、利益率、キャッシュ・フローを創出することができた。Customer 360プラットフォームとSlackの圧倒的な強みにより、2026年会計年度には500億ドルの収益達成に向けて順調に進んでいる。」
第3四半期の決算は好調だったにも関わらず、経営陣が発表した第4四半期の業績見通しは市場予想を下回るものであった。これに投資家は失望している。
四半期の決算が発表される前、同社株は300ドルをわずかに下回る水準で取引されていたが、現在は、267.04ドルで推移している。
同社株の今後の動向
Investing.comが集計したアナリスト50人の予想では、同社株は「アウトパフォーム」の評価を受けており、12ヶ月間の平均目標株価は326.54ドルとなっている。この予想によると現在の株価水準から約22％の上昇が期待されていることを意味する。目標レンジは211.86ドル～385ドルだ。
出所：Investing.com
しかし、最近のハイテク企業のボラティリティの高さやオミクロン株に関連する潜在的なリスクを考慮すると、同社株は今後数週間でどのように推移するかについて、多くの投資家は神経質になっていると思われる。
同社の株価が250ドル、あるいはそれをわずかに下回る水準まで下落する可能性があると予想している。その場合、240ドル近辺がサポートとなりそうだ。
このような潜在的な下落の後、同社株は数週間は横ばいで推移する可能性が高く、おそらく250ドル付近でベースを形成し、その後新たなレッグ・アップがみられるだろう。
したがって、短期的なボラティリティを気にしない長期投資家で、同社に強気見通しを有している場合には、足元の水準で同社株を買うことを検討しても良いかもしれない。また、オプション取引の経験があり、同社株がさらに下落する可能性があると考えている人は、ベア・プット・スプレッドを試してみる価値があるだろう。
しかし、ほとんどのオプション取引は、一般の個人投資家には適していない。したがって、以下の議論は教育目的であり、一般の個人投資家が実際に行うべき戦略ではないことに注意してほしい。
セールスフォース株におけるベア・プット・スプレッド
現在の株価：267.04ドル
ベア・プット・スプレッドでは、トレーダーは高い権利行使価格のプットのロングと、低い権利行使価格のプットのショートを保有する。いずれも裏付け株価は同じ（今回の場合はセールスフォース）で、有効期限も同日だ。
トレーダーは同社株が値下がりすることを望んでいる。しかし、ベア・プット・スプレッドでは、潜在的な利益または潜在的な損失の両方の水準が限定される。このようなベア・プット・スプレッドは、最大損失を表すネット・コスト（またはネット・デビット）を形成することになる。
この例を続ける。
この戦略の最初のレッグとして、トレーダーは、セールスフォース株で有効期限2022 年1月21日、権利行使価格 260ドルのプット・オプションのように、アット・ザ・マネー（ATM）またはややアウト・オブ・ザ・マネー（OTM）となっているプッ ト・オプションを購入する。このオプションは現在、9.70ドルで取引されている。2ヶ月弱で満期を迎えるこのオプションを所有するには、トレーダーは970ドルのコストがかかる。（100株分購入する場合）
この戦略の第2のレッグは、同社株の2022年1月21日の権利行使価格250ドルのコール・オプションのようなOTMのプットを売ることだ。このオプションの現在のプレミアムは5.25ドルなので、100株分取引するとなるとオプションの売り手は、取引手数料を除いて525ドルを受け取ることになる。
最大のリスク
この例では、最大のリスクは、オプションの取引価格の差（スプレッドのコスト）に手数料を加えたものになる。ここでは、スプレッドの正味コストは4.45ドル（9.70ドル - 5.25ドル = 4.45ドル）である。
各オプション契約ではセールスフォース株の100株分取引するため、4.45ドルを100倍する必要があり、最大損失リスクは445ドルとなる。.
ポジションを満期まで保有し、両レッグが無価値になった場合、つまり満期時の同社株価がロング・プットの権利行使価格（この例では260ドル）を上回った場合、トレーダーは単にこの金額を失うことになる。
潜在的な最大利益
ベア・プット・スプレッドでは、潜在的な利益は、2つの権利行使価格の差から、スプレッドの正味コストと手数料を差し引いたものに限られる。
つまりこの例では、権利行使価格の差は10ドル（260ドル-250ドル＝10ドル）である。そして、上でみたように、スプレッドの正味コストは4.45ドルだ。
したがって、最大の利益は手数料を差し引いた1株あたり5.55ドル（10.00ドル - 4.45ドル = 5.55ドル）となる。5.55ドルに100株をかけると、このオプション戦略の最大利益は555ドルだ。
この最大利益は、満期時に同社価がショート・プットの権利行使価格（低い方の権利行使価格）以下になった場合（この例では250ドル）に実現する。
オプション取引の経験がある人は、ショート・プットのポジションは、株価が権利行使価格（ここでは250.00ドル）を下回った場合、満期時に割り当てられるのが一般的であることをご存知だろう。しかし、早期譲渡も可能かもしれない。そのためこのポジションは満期まで監視する必要がある。
満期時にブレーク・イーブンとなるセールスフォース株の株価
最後に、この取引の損益分岐点を計算してみよう。この価格であれば、このトレードは利益も損失も出さないものだ。
満期時に、ロング・プットの権利行使価格（この例では260.00ドル）から支払ったネット・プレミアム（ここでは4.45ドル）を引いたものが、損益分岐点の株価となる。
この例では、260.00ドル - 4.45ドル = 255.55ドル (手数料を除く)だ。
セールスフォース株の結論
セールスフォースの株式は、ほとんどのリテール・ポートフォリオにとって長期的に堅実な選択肢だろう。短期的な株価の変動にもかかわらず、その同社が手掛けるプラットフォームは大きな競争力を有しており、同社の成長軌道は損なわれないだろう。
しかし今後数週間のうちに、さらに下落圧力がかかる可能性はある。したがって、セールスフォース株に弱気な見通しを持っているトレーダーには、ここで説明したような取引戦略が良いかもしれない。
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