今週の見通し:インフレ、地政学的リスクがくすぶる中、ディフェンシブ株のアウトパフォームを予想

 | 2022年04月18日 03:47

  • テクノロジー・セクターは引き続きアンダーパフォーム

  • 低迷する市場センチメント

  • FRBのインフレ論はタカ派、ハト派とも市場にとっては重し

  • 投資家は市場の好材料として良好な企業決算を期待

  • 投資家が複数のグロース株への逆風を回避しようとする中、ディフェンシブ株は引き続きアウトパフォームすると思われる。不確実性やインフレの高まりの中でより安定的に推移すると期待されるディフェンシブ株へと需要が集まるとみられる中、テクノロジー・セクターの売りは続くと予想される。

    グッド・フライデーで祝日となった先週の金曜日を控え、木曜日はほとんどのS&P500セクターが下落して取引を終えた。エネルギーが0.33%上昇した以外では、公益が唯一上昇し、それも0.05%と僅かな上昇にとどまった。

    テクノロジーは2.43%下落し、これは最近の市場の乱高下で投資家がキャピタル・ゲインの可能性よりも資本の保全を重視したためで、先行き不透明感に対する恐怖のほうが投資意欲を上回り続けている。テクノロジー・セクターに近い通信サービスは1.7%下落、この日2番目に悪いパフォーマンスのセクターとなった。

    ディフェンシブ・セクターの代表格である生活必需品も下落し、いかに市場が弱気になっているかを示している。同セクターの下落は-0.03%と限定的だ。産業はディフェンシブ・セクターではないが、0.11%の下落にとどまった。ロシアがウクライナに対して積極的に動いたことで、供給途絶への懸念からエネルギー株が大きく上昇し、製造工場や輸送ルートの再構築など世界の商業の再構築が必要になる可能性もあり、素材の株価も低迷し、このセクターは「わずか」0.34%の下落にとどまっている。

    同じ市場動向は週次パフォーマンスにも反映されている。ハイテク株は-5.13%のアンダーパフォーム、次いで電気通信サービスが2.78%の下落。週次で上昇したのは消費財+0.57%、素材+1.27%、エネルギー+3.17%の3セクターのみだ。エネルギーは0.8%の下落でしたが、S&P500が週次で2.39%下落していたことを考えると、まずまずのパフォーマンスといえる。

    過去6ヶ月間、エネルギー株は約40%上昇と、市場をアウトパフォームしており、次いで公益が15.5%、消費財が11.07%、素材が6.15%とそれぞれ上昇している。

    現段階では、過去12ヶ月でわずか4%の上昇にとどまったテクノロジー株は、年率でも特にポジティブとはいえない。原油価格が堅調に推移していることから、エネルギー株は+62.33%となり、年間ベースでのアウトパフォーマーとして断トツとなっており、素材も上位に名を連ねている。逆に通信サービスは 12.43%下落した。

    パンデミックによるロックダウンを含む 過去5 年間では、テクノロジー・セクターは180%のプラスである。

    よりタカ派になるFRB、市場の方向感がつかめず、先行き不透明感が強い状況 /h2

    米連邦準備制度理事会(FRB)は、インフレは一過性のものであるという当初の見解から一転して、現在はよりタカ派的な姿勢をとっており、市場の緊張を高めている。いくつかの大手銀行は、FRBによる積極的なスタンスが経済成長を阻害する可能性があると警告している。世界的なコロナ禍によって経済成長には逆風が強まり、グローバル規模の供給不足によってさらに状況は悪化し、ロシアが史上初めて公然と核戦争を予告したことによって、第二次世界大戦以来の欧州では大規模な戦争が勃発するかもしれない。

    しかし一部のアナリストは、FRBが物価上昇を何ヶ月も放置し、実際にインフレ抑制のために大書を始めたのが遅すぎたと考えている。この主張は、FRBがインフレに先んじるのではなく、インフレを追いかけているとの見方に立っている。このシナリオでは、利上げのタイミングが遅れ、インフレを足止めするのではなく、加速させることになる。

    金融市場のセンチメントは把握しにくいものである。しかし、このような状況下では、熟練した投資家であっても、FRBの政策スタンスに対してどのネガティブな解釈に従ってポートフォリオを再調整すべきか判然としないだろう。

    このようなリーダーシップの欠如が、多くの人が市場の方向感をつかめない理由だろう。景気循環の中で相反する動きをする傾向が強い株式と債券が一様に下落しているのである。

    先月、米国債利回りは短期ゾーンが長期ゾーンを上回り、逆イールド状態となり、景気後退の先行指標とされる警告サインを発した。

    逆イールド状態はわずかながら修正され、米国10年債利回りは2018年以来初めて2.8%を超えて木曜日を迎え、利回り上昇は将来的な金利上昇の見方を反映しているため、株式投資家にとって不吉な警告となっている。

    実際、米国債利回りはFRBの政策スタンスを維持させるため、自己実現的な予言となっている。すでに割高な株式市場により資金が流入することで、株価は一層値上がりしてきたが、今では債券の利回りが上昇することで株式の期待リターンや配当利回りと競合するようになっている。