アングル:お祭り騒ぎのCOP28、企業の「隠れみの」か成功のサインか

Reuters

発行済 2023年12月07日 18:04

Valerie Volcovici

[ドバイ 4日 ロイター] - 派手な各国パビリオン、スポンサー企業付きのカクテルパーティー、よりどりみどりのサイドイベント──。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催中の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)は、まるで見本市かサーカスの様相を呈している。

輝く都市、ドバイの街で見かける広告が宣伝するのは、風力発電の利点や気候変動対策に向けた野心的な計画、そして米石油大手エクソンモービルによる二酸化炭素(CO2)回収プロジェクトだ。

今年の会議の参加登録者数は8万4000人と、COP史上最高を記録した。1995年にドイツのベルリンで開かれた初回会合とは様変わりだ。当時のCPOは地味なイベントで、出席者は4000人に満たなかった。

この様子を成功の証しだと見る者もいれば、気候変動対策という本来の趣旨からそれることを警戒する声もある。

企業のロビー活動を精査するコーポレート・ヨーロッパ・オブザーバトリーの研究員、パスコー・サビド氏は「CO2排出の張本人が、気候変動対策を隠れみのにして政治家にすり寄るロビー祭りだ」と手厳しい。

一方で、国連とCOP支持派は、COPが無ければ地球環境はもっと悪くなっていただろうと言う。

シンクタンクE3Gのシニアアソシエートで、COPに毎回出席しているアルデン・メイヤー氏は、カーニバルのような雰囲気は、気候危機に対する世界的な関与が高まっていることを示す明るい兆候だと言う。

「非常ににぎやかで良いことだ。この問題への注目が一気に広がる臨界点に達したことを意味している」と評価した。

エネルギー効率、天然ガス、再生可能エネルギー業界を代表する「持続可能なエネルギーのためのビジネス評議会」のリサ・ジェイコブソン会長も同意見だ。

ジェイコブソン氏は、2000年にオランダ・ハーグで開催されたCOPでは、参加者数全員が、1つの講堂に収まったと振り返る。参加者が8万人を超える今の状況こそ「私たちが何より望んでいたことだ」と語る。

<空約束への懸念>

各国はCOPの冒頭で、自主的な宣言やイニシアチブを発表するようになった。2週間の厳しい交渉に向け、前向きなトーンを打ち出すのが狙いだ。

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ドバイでは、再生可能エネルギーと原発の発電能力を世界全体で3倍にするとの宣言から、石炭からの転換を加速させて農家の土壌改良を支援するという約束まで、拘束力のない合意が次々と発表されている。

複数の石油・ガス企業は、化石燃料の生産を削減する代わりに自社事業を脱炭素化すると約束し、こちらは物議を醸した。

グローバル戦略コミュニケーション評議会の調べでは、COP28の最初の5日間で数十の自主的なパートナーシップが発足または拡大し、少なくとも37の新たな資金拠出宣言が成された。

空約束に終わることを心配する声もある。

島国フィジーの気候関連特別顧問、ダニエル・ランド氏は「COPにおける新たな宣言や誓約の増殖については、常にそして、ますます慎重に見るようになっている」と言う。

「フィジーは過去に、長期的な取り組みとなるはずの呼びかけに参加したが、すぐに忘れ去られてしまった」からだ。

インドネシアのジョコ大統領は3日、COP28の傍らで開催された新興・途上国が参加する「G77・中国サミット」で、各国の誓約は一見素晴らしいが、気候変動と闘うために先進国が今すぐ成すべき事から注意を逸らしていると指摘。「COP28は野心を誇示する場ではなく、実施を加速させるためのイベントでなければならない」と述べた。

天然資源保護協議会の国際プログラム担当ディレクター、ジェイク・シュミット氏は「提出して忘れる」ことのまん延を防ぐため、宣言には説明責任が求められると言う。「宣言は目下の協議に弾みを付けるものではあるが、達成を義務付けるメカニズムが多くあるかと言うと疑問だ」とシュミット氏は語った。

<石油メジャー>

国連の文書によれば、石油企業はこれまで常にCOPに参加してきたが、大部分は舞台裏での活動だった。

しかし、今回は議長を努めるジャベル氏がUAE国営石油会社のトップであり、エクソンモービルのダレン・ウッズCEOなど、石油大手の重鎮がハイレベルなイベントの最前列に座っている。

エクソンを含む石油・ガス企業50社は、自社の事業におけるCO2排出量削減を誓約したことでも一時的に脚光を浴びた。