資金繰り支援など3月以降のコロナ対応、効果を発揮=黒田日銀総裁

Reuters

発行済 2020年07月15日 16:39

更新済 2020年07月15日 17:54

[東京 15日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は15日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、企業の資金繰り支援や金融市場の安定に向けて行ってきた一連の政策が効果を発揮していると述べた。国内の感染状況について「第2波にはなっていない」との認識を示す一方、必要ならちゅうちょなく追加緩和に踏み切る方針を強調した。

日銀は資金繰り支援特別プログラム、国債買い入れやドルオペなどによる円貨・外貨の潤沢な供給、上場株式投信(ETF)や不動産投信(J-REIT)の積極的な買い入れといった3本の柱で金融緩和を強化してきた。黒田総裁は、引き続き3つの柱で資金繰り支援と金融市場安定に努めていく考えを示した。

<感染第2波にあらず>

足元の経済については「回復の兆しがみられる」との認識を示した。緊急事態宣言の解除などでいったん底を打ったあとでかなり急速な回復がみられるが、その後は「緩やかではあるが、着実に回復していく」との見通しを示した。

今回の展望リポートでは20年度の実質国内総生産(GDP)見通しが前回の予想レンジから下方にシフトする一方、21年度・22年度の予想は引き上げられた。黒田総裁は「全体としておおむね前回の範囲内に収まっている」と述べた。予想インフレ率については「中長期のはそれほど下がっていない。デフレに陥ることは懸念していない」とした。

ここにきて東京を中心にコロナ感染が拡大していることについては「第2波というような大きなものにはなっていない」とする一方、感染状況が経済に与える影響は十分注意していく必要があるとし、必要ならちゅうちょなく追加緩和措置を行う考えを示した。

具体的な追加手段として、黒田総裁は「特別プログラムの拡充のほかに、YCC(イールドカーブ・コントロール)の枠組みにおける長短金利の引き下げなどいろいろな手段がある」と指摘。追加緩和に踏み切る時点での金融・経済情勢を踏まえ、適切に判断するとした。

<コロナ長期化ならソルベンシー問題に>

黒田総裁は、コロナの影響が長引けば「企業によっては資金繰りの問題ではなくソルベンシー(財務健全性)の問題になる可能性がある」と指摘。ソルベンシーの問題が大きくなれば金融機関の信用コストに増加圧力が掛かるため、注視していくと述べた。

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一方、「企業のソルベンシー問題の解決は日銀の役割ではなく、経済界や政府の支援が必要」とも述べた。

<YCCの意義を強調>

超長期金利の上昇傾向について、黒田総裁は従来のコメントを繰り返した。16年の総括検証を踏まえて「超長期金利の過度な低下は保険や年金の運用利回りを低下させてマインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性がある」と指摘する一方、「感染症の影響で債券市場の流動性が低下しているもとで、国債増発が見込まれていることを踏まえると、債券市場の安定を維持してイールドカーブ全体を低位に安定させることが最も重要だ」と述べた。

黒田総裁は「政府が必要に応じて国債を増発した場合に、金利が上昇することがYCCのもとで防がれるのは財政政策・金融政策のポリシーミックスが自動的に実現される」と話し、YCCの意義を強調した。