ホンハイなど、メキシコへの工場移転を検討 米中摩擦やコロナで

Reuters

発行済 2020年08月25日 02:44

[香港/台北/メキシコ市 24日 ロイター] - 米中貿易摩擦や新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により各社が世界の供給網を見直す中、台湾の電子部品メーカー、鴻海(ホンハイ)精密工業 (TW:2317)や和碩聯合科技(ペガトロン) (TW:4938)を含む複数の企業がメキシコでの工場建設を検討している。関係筋が明らかにした。

中南米第2位の経済規模を持つメキシコは、1930年代の世界大恐慌以来、最も深刻な景気後退(リセッション)に陥る見込みだ。企業がメキシコに工場を建設した場合、向こう数年間でメキシコが大いに必要としている数十億ドル規模の投資資金が流れ込む可能性がある。

鴻海とペガトロンは、米アップル (O:AAPL)を含む複数の携帯電話メーカーの製造請負業者。両社がどのメーカーの工場をメキシコに建設するのかは不明。

2人の関係筋によると、鴻海は新規工場でアップルのiPhoneを製造する計画だ。ただ、ある関係筋によると、アップルが計画に直接関わっている兆しは今のところない。2人によると、鴻海は年内に新規工場について最終的な決断を下し、その後建設を開始する。計画が遂行されるかどうかは確実でないと付け加えた。

アップルの報道官はコメントを控えた。

ペガトロンも、主に半導体やその他の電子部品を組み立てるためにメキシコに新たな工場を建設するため、金融機関と初期段階の交渉を進めているという。ペガトロンはコメントを控えた。

鴻海はメキシコに、主にテレビとサーバーを製造する5つの工場を持っている。工場を増やした場合、米中貿易摩擦や新型コロナ危機のさなか、世界のサプライチェーン(供給網)が徐々に中国以外に移行していることを示す一例となる。

米国では最終消費市場近隣での生産(ニアショアリング)を後押しする声が高まっている。トランプ政権は企業が工場をアジアから米国や中南米、カリブ海諸国に移すことを促すために奨励金を出すことを検討している。

メキシコは世界最大の消費国である米国と新たな自由貿易協定を結んでおり、地理や低賃金、時間帯の点で有利だ。世界的な景気後退やロペスオブラドール大統領の下でのビジネス環境を巡って懸念はあるものの、政府の統計によると外国からの投資は年初来、持ちこたえている。

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鴻海について、3人目の関係筋は「同社は確かにメキシコ政府に接触した」と述べる。交渉は初期段階にあり、メキシコで新型コロナ感染件数が増えていることが投資の主な懸念材料だという。

メキシコで台湾を代表する駐メキシコ台北経済文化代表処は、鴻海がチワワ州北部のシウダー・フアレスに新たな工場を建てることに興味を示しているらしいと話した。鄭正勇代表はロイターに対して「ペガトロンも生産ラインを中国からメキシコへ移したいと理解している」と述べた。両社の計画の詳細は知らないとし、「メキシコは供給網の調整を図る企業にとって理想的な国の一つだ」と付け加えた。

新型コロナを受け、太平洋を越える供給網は停止状態となった。自動車や電子製品などを中国から調達できない事態となり、米国から遠い地域に生産拠点を設けることへの企業の懸念が高まった。

さらに、新たに発効した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の下、米国の無関税輸入の条件である原産地規則が厳しくなった。

こうした動きはメキシコにとって好機となるが、多くの投資家はロペスオブラドール大統領が史上最大の機会を逸するとみている。専門家はメキシコ政府の新型コロナ危機の管理がおろそかだった点を指摘する。メキシコの新型コロナ死者数は世界で3番目に多い。