アングル:ミサイル発射に沈黙の北朝鮮メディア、核実験の効果的報道が狙いか

Reuters

発行済 2022年05月27日 15:17

[ソウル 26日 ロイター] - 北朝鮮は新型コロナウイルス感染がかつてない広がりを見せる中で、大陸間弾道ミサイル(ICBM)など複数種のミサイル計3発を断続的に発射したが、国営メディアは沈黙を守ったままだ。これは準備が進んでいる核実験がミサイル発射報道でかすんでしまうのを避けるためではないかと専門家はみている。

北朝鮮は25日、ICBMの「火星17」などミサイル3発を発射。韓国軍と在韓米軍はミサイル発射訓練を実施し、国連安全保障理事会では対北朝鮮制裁強化決議案が提出された。

北朝鮮は新型コロナの発生が初めて確認され、国連機関は国民が壊滅的な危機に見舞われる恐れがあると警告している。そうした状況下で、珍しく複数種のミサイルがほぼ同時に発射された。

専門家によると、今回のミサイル試射は北朝鮮が兵器開発計画における技術向上に力を注いでいることを示している。しかし、いつもなら発射の成功や核・ミサイル能力の進展を大々的に報じる北朝鮮の国営メディアは、異例の沈黙を続けている。

韓国の民間シンクタンク・世宗研究所の南北関係専門家、張成昌氏は「北朝鮮は新たな核実験の準備も進めている。そのため国営メディアは、お披露目済みのミサイルの実験については伝えず、核実験のプロパガンダ効果を最大化しようと考えているのだろう」と話した。

最近のミサイル発射実験はすべてが順調だったわけではない。韓国政府によると、今回発射された3発のミサイルのうち、短距離弾道ミサイル(SRBM)とみられる2発目は失敗した。

米カーネギー国際平和財団の上級研究員、アンキット・パンダ氏は今回のミサイル発射について「純粋に技術的進歩のためで、SRBMと思われるミサイルについては運用経験を積むためではないか」と述べた。

韓国大統領室の金泰孝・国家安保室次長は、ICBMの発射は推進システムや全般的な能力のチェックが目的で、SRBMの発射は核弾頭を運ぶ能力を改善するためではなかったかとみている。

また、北朝鮮が2017年以来となる核実験に向けた準備で、起爆装置について複数回の実験を行ったかもしれない兆候があるが、核実験が数日以内に実施される可能性は低いとも述べた。

金氏は25日、記者団に、「北朝鮮の核開発計画は進化し続けている。進歩は垂直的上昇を示さないかもしれないが、常にチェックし、改善を図る必要がある」と指摘。「だからこそ、制裁が重要であり、その進捗を抑えたり、遅らせたりするのがわれわれの任務だ」と述べた。

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パンダ氏は、北朝鮮の主要メディアである朝鮮労働党機関紙、労働新聞がミサイル発射を報じないことについて、政府がこれらの実験に「国内におけるプロパガンダ面での効果」を何ら求めていないことを示唆しているのではないかと述べた。

一方、世宗研究所の張氏は国営メディアの沈黙について、中国の不満をなるべく抑え、対コロナ支援を得られやすくする意図もあるのではないかとみている。