アングル:終わらぬ中国「ゼロコロナ」政策、経済への影響長期化

Reuters

発行済 2022年07月16日 15:53

[北京 14日 ロイター] - 中国は新型コロナウイルスを巡り、厳格に感染を抑止する「ダイナミックゼロ」政策を小幅に修正しているものの脱却する兆しは見えず、ワクチン接種でも遅れを取っている。このことは中国経済に暗い影を落とし続けそうだ。

政府はダイナミックゼロ政策脱却に向けた工程表を示していない。こうした政策は来年も続くと予想されており、住民と企業を覆う不透明感は長引く見通しだ。

最近も感染が散発して一部都市ではロックダウン(都市封鎖)が実施された上、感染力の強い新型コロナ変異種「BA.5」が登場したため、懸念はさらに強まっている。

ロックダウンの影響に加え、くすぶり続ける不動産市場の問題と世界経済の不確実性が中国経済に重くのしかかる。

今週は、上海の住民2500万人に新型コロナの集団検査が義務付けられた。野村の推計では、11日現在、31都市が全面的もしくは部分的なロックダウンを実施中。これらは国内総生産(GDP)の4分1に寄与する地域であり、約2億5000万人が影響を受けている。

諸外国がコロナとの共生を図っているのとは対照的に、中国の習近平国家主席は厳格な対策によって救われた命を強調する。

現在はワクチンによって新型コロナの致死率が大幅に下がったにもかかわらず、中国は過去の感染抑止策の成功に捕らわれ続けている、との指摘もある。

みずほの首席アジアFXストラテジスト、ケン・チョン氏は13日、「世界の他の国々が活動を再開し、サプライチェーン(供給網)が正常化する中、中国のゼロコロナ政策は輸出受注と生産を諸外国にシフトさせるだろう」と記した。

欧州連合(EU)商工会議所のJoerg Wuttke会頭は「世界は中国が集団免疫を高めるのを待っていられない」と述べた。 

<自国製ワクチンに不信感>

中国は感染拡大と死者数の増加を食い止めた裏返しとして、集団免疫の獲得が遅れている。

それでも積極的なワクチン接種策には乗り出していない。北京市は、人混みの多い場所に入る際にワクチン接種を義務化する計画を立てたが、インターネット上で強い反発に遭って先週撤回した。

しかも中国は、より有効性の高い「メッセンジャーRNA(mRNA)」ワクチンの輸入を承認しておらず、自力での開発も十分に進んでいない

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Wuttke氏は「制限措置が解除されるのは高齢者へのワクチン接種が完了した後だろう。2023年秋以降になるかもしれない」と言う。

中国は人口14億1000万人の90%近くにワクチンを接種し、56%近くは3回目の接種も終えた。それでも高齢者約3000万人がまだ接種していない。

米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の疫学教授、ジャン・ゾーフェン氏は、中国製ワクチンは安全性とオミクロン変異株に対する有効性についてのデータが不足しているため、政府も国民もこのワクチンへの信頼感が低いと指摘。「中国が自国製ワクチンを信頼していて、国民の接種率が高ければ、今ごろは感染根絶を目指す姿勢から重症化や死亡の抑制へと焦点を移していたはずだ」と語った。

<制限を一部緩和>

中国が、より精度の高いコロナ対策へと移行しつつあるのは事実で、上海で2カ月もロックダウンが続いた時のような悪夢が再来するとは予想されていない。

中央政府は地方政府に対し、不必要に任意の制限措置を実施しないよう指導している。エコノミストによると、対策の洗練度が上がったため、4、5月のようにロックダウンが世界のサプライチェーンを大混乱させる可能性も減った。

例えば最近は、入国者の隔離期間を7日間に短縮し、国内でも最近の旅行履歴の調査を軽減した。

今年の共産党大会で前代未聞のトップ3期目入りを確実にしたい習近平氏は、新型コロナの感染者・死者急増を防ぎつつ経済の急下降も避けるという、微妙な舵取りを迫られている。