米雇用、7月は176.3万人増 前月から大幅減速 失業率は改善

Reuters

発行済 2020年08月07日 23:13

更新済 2020年08月08日 01:18

[ワシントン 7日 ロイター] - 米労働省が7日に発表した7月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月から176万3000人増となった。伸びは予想の160万人を上回ったものの、過去最大となった前月の479万1000人からは大きく鈍化。新型コロナウイルス感染が再び拡大する中、景気後退(リセッション)からの回復が失速していることが改めて示された。

7月の失業率は10.2%と、6月の11.1%から改善。ただ、コロナ禍で発生した「雇用されているが休職中」の人の扱いが依然かく乱要因となっている。7月中旬時点で何らかの失業手当を受けていた人は少なくとも3130万人に上った。

時間当たり平均賃金は前月比0.2%増と、予想の0.5%減に反して増加した。労働参加率は61.4%だった。

ロヨラ・メリーマウント大学(ロサンゼルス)の財政・経済学教授、スン・ウォンソン氏は「経済のエンジンから蒸気が消えてしまっており、景気は減速し始めている。今後も勢いのない状況が継続する見通しで、コロナの感染再拡大や議会による対応の欠如に伴い、雇用が再び減少に転じないか心配だ」と述べた。

失業者に対する週600ドルの特別給付措置は先月末で失効しているほか、数千社に及ぶ企業が政府から支給された給与保障金を使い果たしており、追加対策対策を巡ってホワイトハウスや議会への圧力が強まりそうだ。

MUFG(ニューヨーク)のチーフエコノミスト、クリス・ラプキー氏は「雇用回復は非常に不安定な状況にあり、追加の財政刺激策によって失業者にシートベルトを提供しなければ、経済は激しい揺れに襲われる可能性がある。大勢の失業者を抱えたままでは、持続的な経済成長は望めない」と指摘した。

雇用者数は今年2月にピークとなる1億5250万人に到達。その後のコロナ禍で失業者は急増した。現在の雇用水準はコロナ前よりも1290万人少ない。エコノミストの多くは、経済再開に伴う雇用の伸びは7月がおそらく最後になると予想する。

各種世論調査によると、11月3日の大統領選に向け、現職のトランプ大統領は支持率で野党民主党のバイデン前副大統領に遅れをとっている。労働市場の後退は再選を狙うトランプ氏にとって致命傷になりかねない。

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2月に景気後退入りした経済は、第2・四半期に大恐慌以降で最大の打撃を受け、国内総生産(GDP)は少なくとも73年ぶりの大幅な落ち込みを記録した。

コロナ感染は先月、全国的に急増。南部や西部など感染拡大が顕著な地域では、営業の再停止や経済再開の一時中止、労働者のレイオフ(一時帰休)などを余儀なくされ、モノやサービスへの需要が低迷した。

雇用統計の内訳を見ると、政府機関を除く全てのセクターで雇用が減速した。娯楽・宿泊は59万2000人増で、非農業部門の雇用者数の伸びの約3分の1を占めた。食品サービス・飲料店は50万2000人増。先月は290万人の伸びだった。過去3カ月では増えているものの、2月以降では依然260万人減少している。

小売りは25万8000人増。2月以降では91万3000人減少している。7月の伸びの約半分は衣料・アクセサリー店が占めた。政府関連は30万1000人増。2月以降では110万人減。専門職・企業サービスは17万人増。2月以降では160万人減。

医療関連は12万6000人増。このうち歯科医院は4万5000人、病院は2万7000人、診療所は2万6000人、それぞれ増加した。一方、福祉・介護施設は2万8000人減少。医療全体では2月以降、79万7000人減少した。

失業率について、労働統計局(BLS)では、かく乱要因を除いた場合、11.2%と推定されると指摘。ただ、1%ポイントの開きは「誤分類の推定値の上限を示しており、おそらく誤分類の大きさを誇張している」と注意を促した。