アングル:中国経済再拡大が後押し、アジアの景気に回復の兆し

Reuters

発行済 2020年11月02日 13:27

[北京/ソウル 29日 ロイター] - 中国経済は世界で最初に新型コロナウイルスの感染が拡大してから1年足らずで、新たな拡大局面に入ろうとしている。この流れに乗る形で、アジア全体も景気が回復する兆しが見えてきた。

国際的な注目は米大統領選の行方や、欧米諸国が再び急増する新型コロナ感染者の対応に苦戦する状況に集まっているが、その裏で中国は幾つかの重要なセクターが持ち直しつつある。

今年早い時期に世界で最も厳格なロックダウンを実施した中国は今、主要国で唯一今年の成長率がプラスになりそうで、国際通貨基金(IMF)の予想はプラス1.9%だ。中国の国内総生産(GDP)は今年第1・四半期が前年比6.8%減、第2・四半期が3.2%増、第3・四半期が4.9%増だった。

ウエストパックのシニアエコノミスト、エリオット・クラーク氏は「詳しく基調を分析すると、中国が足を踏み入れている新たな拡大局面は強固で耐久力があることが分かるだろう。今年は世界の成長率がマイナス4%に落ち込む中で、中国はプラス2%になる見通しだ。来年は世界は約プラス6%成長と見込まれるが、中国の成長率は10%近くに達し、世界のこの経済成長を支えるだろう」と述べた。

こうした成長は近隣諸国などにとっては輸出需要の増加につながり、これを通じて自分たちの経済活動を後押ししてくれる。コモンウェルス・バンク・オブ・オーストラリアのアナリストチームは「中国の鉱工業生産はコロナ前の水準を上回っており、引き続き唯一のコモディティー消費大国になっている」と指摘する。

中国の9月の輸入は前年比で13.2%増え、特に半導体輸入が28%伸びた。これは台湾と韓国からの輸出には追い風になった。

実際、27日に発表された韓国の第3・四半期GDPは季節調整済み前期比が1.9%増と10年ぶりの高い伸びで、第2・四半期の3.2%減からの立ち直りが鮮明。韓国の第3・四半期輸出も15.6%増と1986年以来の大幅な伸びとなり、第2・四半期の落ち込み(16.1%減)をほぼ帳消しにした。洪楠基(ホン・ナムギ)企画財政相は「中国やその他主要国の景気回復を背景に韓国からの輸出は急速に改善し、それがわれわれの第3・四半期の成長を主導した」と説明した。

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中国経済がいち早く持ち直したことは、日本にとっても助け船になっている。日本の輸出に占める中国向けの比率は22%強と、米国向けの19%より高いからだ。1-9月期の対中輸出は前年同期比14%増と2年余りぶりの伸びで、非鉄金属、半導体製造装置、自動車の強い需要が全体を引っ張った。

日銀は、中国向け輸出需要が改善しているという産業界からのヒアリング結果を踏まえ、国内経済の先行きにある程度楽観的になっている。10月の地域経済報告(さくらリポート)には名古屋の輸送機器メーカーの声として「中国の自動車市場は同国の経済活動再開後、政策効果もあって販売が前年を上回って推移している。こうした中、中国向けの自動車部品輸出が増加している」と記されていた。

中国と政治的な緊張が続く台湾でさえ、恩恵に浴している。例えば9月の中国向け輸出は前年比22%増加。海外のハイテク需要の先行指標となる輸出受注も9.9%増えたが、中国からの受注の伸び率は30%を超える勢いだった。 

中国経済の新たな拡大は、セクターで見ると製造業から建設、投資、内需まで裾野が広がっている。

それでも一部の国には先行きのリスクは残る。英豪系鉱業大手リオ・ティント (AX:RIO) (L:RIO)は最近のリポートで、幾つかの国の経済が新型コロナ対策で再び活動を停止してしまう可能性に警鐘を鳴らした。さらに米大統領選後に米中貿易戦争が再び激化するか、あるいは別の地政学的緊張が高まるかすれば、アジアの持続的な景気回復を脅かすことになる。