供給制約・原油高で貿易赤字3カ月連続、10月赤字額は674億円

Reuters

発行済 2021年11月17日 09:00

更新済 2021年11月17日 10:54

[東京 17日 ロイター] - 財務省が17日発表した貿易統計速報によると、10月の貿易収支は674億円の赤字だった。貿易赤字は3カ月連続。供給制約に伴う自動車輸出の減少と燃料輸入コストの増加が響き、赤字体質から抜け出せない構図が鮮明になってきた。

輸出は7兆1840億円で、前年同月に比べて9.4%増えた。鉄鋼や半導体製造装置、鉱物性燃料などの輸出が伸びた。世界的な半導体不足に加え、東南アジアからの部品調達難が響き、自動車輸出は36.7%減少した。

地域別では、対米輸出が1兆3031億円と前年同月比0.4%増えた。欧州連合(EU)向けは12.1%増の6715億円、アジア向けは15.0%増の4兆2447億円だった。対中輸出は1兆5969億円と前年同月比9.5%増え、16カ月連続で増えた。

財務省によると、アジア、中国向けの輸出額は10月としては1979年1月以降で最大だった。鉄鋼や半導体製造装置、半導体電子部品の輸出がアジア向け輸出を押し上げたほか、中国向けでは半導体製造装置や半導体電子部品、非鉄金属がプラスに寄与した。自動車輸出はいずれの地域向けも減少した。

一方、輸入は7兆2514億円で、前年同月に比べて26.7%増えた。原粗油や石炭、液化天然ガスの輸入が増えた。原粗油は前年比81.0%のプラスだった。

<輸出入とも想定下回る伸び>

ロイターが集計した貿易収支の予測中央値は3100億円の赤字で、公表された赤字幅は市場予想より小さかった。貿易収支のうち輸出は前年比プラス9.9%、輸入は同31.9%と予想されていたが、いずれも想定を下回る伸びにとどまった。

農林中金総合研究所の南武志主席研究員は3カ月連続で貿易赤字となったことについて「9月と同様に、自動車(輸出)がかなりのブレーキになっている。特に米国向けが大きい」としている。対米輸出のうち、自動車の減少幅は全体(36.7%)を上回る46.4%だった。

輸入の伸びも想定を下回り、赤字額そのものが縮減した要因として「原粗油の輸入数量が減っており、原油高による買い控えの動きも影響したのではないか」と、農中総研の南氏はみている。

みずほ証券の片木亮介マーケットエコノミストは、原油高の影響が貿易収支に本格的に反映されるのは「来月や、もう少し先になるのではないか」と指摘。原油以外では「新型コロナワクチンとみられる医薬品の寄与が小さく、輸入がさほど大きく伸びなかった」としている。

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*財務省の発表資料は以下のURLをクリックしてご覧ください。http://www.customs.go.jp/toukei/latest/index.htm