日銀、賃金・物価情勢点検へ マイナス金利解除になお見極め必要か

Reuters

発行済 2023年12月14日 13:50

Takahiko Wada

[東京 14日 ロイター] - 日銀は18、19日に開く金融政策決定会合で、2%物価目標の達成に向け、足元の経済情勢や賃金と物価の状況について議論する。

12月日銀短観が強い結果になるなど、好材料が出てきているものの、中小企業を含む賃上げ動向はまだ不透明で、マイナス金利解除に必要な賃金上昇を伴うかたちでの持続的・安定的な物価上昇が実現するかは、なお見極めが必要な情勢とみられる。

<企業部門は堅調、消費下振れに警戒感>

12月日銀短観は大企業・製造業、非製造業の業況判断DIが市場予想を上回って改善した。価格転嫁の浸透で中小企業の景況感も改善、収益や設備投資計画も強く、企業部門の強さを確認する内容になった。

一方、日銀では個人消費の先行きを懸念する声が出ている。7―9月期の実質国内総生産(GDP)2次速報は1次速報から下方修正され、前期比0.7%減となったが、個人消費の弱さが響いた。物価高が続く中、消費抑制傾向が一段と強まれば企業の価格転嫁の足かせになりかねない。日銀では、消費が腰折れする懸念はないとの声が出ているものの、リスク要因として警戒されている。

11月の東京都区部消費者物価指数では生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)が前年同月比プラス2.3%となり、昨年7月以来の低い伸び率となったが、日銀では輸入物価上昇による物価上昇圧力がはく落しているためであり、日銀の想定した通りの推移だとの声が多い。

<物価目標実現へ、十分な材料そろわず>

物価目標達成の観点からは、物価上昇の要因が輸入物価から賃上げにバトンタッチされ、賃金・物価の好循環が実現するかがポイントになる。

日銀では、好調な企業収益や人手不足を受け、来年の春闘で相応の賃上げ率が実現することへの期待が強い。ただ、中小企業の多くはまだ対応を決めかねているという。

一方、サービス価格の上昇については、宿泊料が中心で、人件費のサービス価格への転嫁に広がりは出ていないとの声が根強い。

日銀は会合直前まで情報を収集し、情勢を見極める。値上げの動きが中小企業に波及するなど、物価目標達成へ前向きな動きは維持されているものの、今回は賃金・物価の好循環の確度が一段と高まる十分な材料が得られておらず、マイナス金利やイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の解除には至らない公算が大きい。

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<植田総裁の会合後の記者会見が焦点>

植田和男総裁が7日の国会で「年末から来年にかけ一段とチャレンジングになるというようにも思っている」と述べ、早期のマイナス金利解除観測が浮上したが、日銀では金融政策の先行きを市場に織り込ませる意図はなかったとの見方が出ている。