アングル:GX移行債、順調な滑り出しか 初物で「オールジャパン」の関心

Reuters

発行済 2024年02月13日 17:46

Tomo Uetake

[東京 13日 ロイター] - 財務省が14日、世界で初となるソブリン(国や国際機関)による「トランジション・ボンド(脱炭素に向けた移行債)」の入札を実施する。新種の国債発行は、2007年の40年利付国債以来、17年ぶり。初めての入札とあって、主要な国内の機関投資家からは入札参加に前向きな声が聞かれ、順調な滑り出しになりそうだ。

<オールジャパンで初物買い>

正式名称は「クライメート・トランジション利付国債」。発行体が日本政府ということもあり、国内投資家の関心は上々だ。ある大手生保は「国策でもあり、当社も入札に参加する予定」と明かした。大手運用会社も入札に参加する意向を示しており、さながら「オールジャパン」のムードが漂う。

BNPパリバ証券の中空麻奈チーフESGストラテジストは、「初物は買い」だと話す。初回の10年債は発行額が8000億円と小規模、かつ入札方式がイールド・ダッチで波乱が起きづらく、発行分は難なく消化されるとの見方を示した。

<グリーニアムは1─2bpから6bp程度か>

明日の入札で市場が注目するのが、同じ条件の普通債と比べてどの程度、プレミアムが付くかだ。「グリーニアム」(グリーンとプレミアムを合わせた造語)といわれ、市場では、初回の10年債で「1─2bpから6bp程度」を予想する声が多い。

ただ、投資家需要が強くプレミアムが大きいほど成功かと言えば、そうではない。というのも、政府は2050年ネットゼロ(カーボンニュートラル)達成に向けた投資の資金調達のため、今年度から10年間で20兆円規模の「GX(グリーン・トランスフォーメーション)経済移行債」を発行するという長期的な計画を持っている。

中空氏は「プレミアムがつけば発行体は安く資金調達ができて喜ばしいが、投資家からすれば流動性がない割に妙味が薄いということで投資意欲にも影響しかねない」として、長期的には不安材料となる可能性を指摘した。

<日銀トレードも可能>

さらに、日銀はGX移行債を他の利付国債同様、国債買い入れオペや気候変動対応オペの対象としており、銀行や証券会社が落札した国債をそのまま日銀に持ちこむことで利益を得られるため、いわゆる「日銀トレード」目的の応札が膨らむ可能性もある。

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SMBC日興証券の小路薫金利ストラテジストは「オペ売却ありきで購入され、その後日銀が大量保有する姿は本来の趣旨にそぐわないだろう。入札後もプレミアムが拡大していく場合、発行後のオペでは買い入れ対象から除外される可能性もある」との見方を示す。

<海外勢の需要は未知数>

もう1つ、政府のGX移行債の長期的な発行計画の成否を占う試金石となり得るのが、日本政府に「忖度」する必要のない海外投資家の需要だ。

財務省によると、同省は1月後半から2月初めの2週間、海外「ロードショー」(機関投資家向け説明会)のため欧米4カ国を訪れて約40社の投資家とのミーティングを実施した。

理財局の担当者は「日本のトランジション戦略への関心は予想以上に高いと感じた」という。