減速する世界経済、財政政策中心に修正すべき=IMF専務理事

Reuters

発行済 2019年10月09日 00:40

減速する世界経済、財政政策中心に修正すべき=IMF専務理事

[東京 8日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事は8日、就任後初めて講演し、世界的な貿易摩擦などが景気を減速させており、金融政策だけでなく財政政策も用いて、世界経済に生じた「ひび割れ」を修正すべきとの認識を示した。

専務理事は世界経済の現状について、新興市場国と発展途上国の経済は底堅い一方で、日米欧などの先進国、中国、インドやブラジルなどの経済規模の大きい新興国では成長の鈍化が顕著だと指摘。IMFとして「今年は、世界の90%近くで経済成長が減速する」と予想している。

減速の理由としてまず貿易摩擦を挙げ、「貿易摩擦の累積的な影響は、世界経済にとって、2020年までに約7000億ドルが失われることを意味する可能性がある。これは世界の国内総生産(GDP)の約0.8%に相当し、スイス経済が一つ失われる計算にほぼ等しい」と警鐘を鳴らした。

その他、英国の欧州連合(EU)離脱や地政学的な緊張によって生じている不確実性が、経済の潜在能力を抑え込んでいるとし、「こうした『ひび割れ』を直すことが私たちの目標であるべきだ」と強調した。

「ひび割れ」を直す上では、金融政策を賢く用い金融安定性を強化することが重要としつつ、多くの先進国ではすでに金利はマイナス圏にあり、伝統的な手法による金融政策の余地は限られていると指摘。低金利の長期化によって企業の債務が拡大しており、「景気が大幅に下降する場合、債務不履行リスクがある企業債務の額は19兆ドルに達するとみられ、これは主要経済国8カ国の債務総額の約40%に匹敵する」と説明した。

こうした状況を打開するには「通貨・金融政策だけでは事足りず、財政政策が中心的な役割を果たす必要がある」との認識を示した。また、各国で経済の構造改革を行う必要があると述べた。