成長持続へ適切に行動、保有資産拡大を近く発表=FRB議長

Reuters

発行済 2019年10月09日 09:35

成長持続へ適切に行動、保有資産拡大を近く発表=FRB議長

[デンバー(米コロラド州) 8日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は8日、世界経済へのリスクを背景に追加利下げにオープンな姿勢を示唆した。また、短期金融市場の安定化に向けて保有資産の再拡大に踏み切る考えを示した。

パウエル議長は、全米企業エコノミスト協会の会合で講演で米経済について「持続可能だ」との見方を示した上で「明らかに若干減速がみられる」と指摘。その上で、長期にわたる景気拡大局面ではあり得ることだとし、1990年代に景気は同様に下振れしたことが2度あるが、数回の利下げで勢いを取り戻したと説明した。

今年に入り行った7月と9月の利下げにより、雇用とインフレ見通しは好ましい状態を維持しているとし、米経済の拡大が持続しない理由はまったくないと述べた。

最近の経済指標の改定で3月までの雇用の伸びが従来より弱まる見込みだとし、「好調な」労働市場が緩やかな伸びに変化していると分析。また、製造業の低迷などを示す指標も経済が鈍化しつつあるという見方を強めていると語った。

アルビオン・フィナンシャルグループのジェイソン・ウェア最高投資責任者は「パウエル氏は、FRBが引き続き下向きリスクを認識し、必要なら経済拡大を支援する決意があるということを落ち着いたトーンで市場に示そうとしているようだ」と述べた。

パウエル氏はまた、短期金融市場を安定させるためFRBが近く保有資産の再拡大に踏み切る考えを示した。

最近の短期金利の急上昇を受けて、民間銀行の準備預金が減少しているとの懸念が浮上しているが、パウエル氏の発言はFRBがそうした懸念に対応し、準備預金を積み増すためTビル(国庫短期証券)の購入を始めることを示唆した。

ただ、こうした措置はテクニカル的なものだと何度か説明し、金融危機後の大規模な資産購入とは「決して」同じではないと強調。量的金融緩和(QE)の再開との見方は強く否定した。

経済見通しについては引き続き「好ましい」とし、成長継続のシナリオが「最も公算が高い」と述べた。ただ、政策当局者は過去1年にわたり「適切な金融政策についての見解をフェデラルファンド(FF)金利低下の方向にシフトしてきた」と言及し、既に0.5%利下げしたと説明。

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こうした措置は「見通しを下支えしている」としながらも、世界的なリスクが拡大する中、FRBは10年来の成長持続へ「適切」に行動すると繰り返した。

また、「データを注視し、見通しと見通しに対するリスクを会合ごとに精査する。全てを考慮し、適切に行動する」と強調。「今後、政策は前もって設定した道筋にはない」と述べた。

先月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、当局者17人のうち7人が年末までにあと0.25%の利下げが必要になるとの見方を示しており、市場では既に織り込まれている。

パウエル議長の講演は、「データに依存する」FRBが経済の現状を正確に反映する経済指標を実際に見ているのか時に確信できない現状について多くの時間を割いた形となった。