[ウェリントン/香港 5日 ロイター] - ニュージーランド(NZ)準備銀行(中央銀行、RBNZ)は5日、銀行に自己資本比率引き上げを求める規制強化を決定した。
NZ市場で約9割のシェアを持つ豪4大銀行は、新たな基準を満たすため、合計130億NZドル(85億米ドル)が必要になると表明。従来予想の200億NZドルを大幅に下回った。
新規制は2020年7月から7年かけて段階的に導入される。当初案の5年から延長された。
中銀は、規制強化は景気変動への耐性を高める狙いがあると説明。ただ、銀行収益への打撃を軽減するため、当初案より導入期間を長く設定した。
豪4大銀行のオーストラリア・アンド・ニュージーランド(ANZ)銀行 (AX:ANZ)、コモンウェルス銀行(CBA) (AX:CBA)、ナショナル・オーストラリア銀行(NAB) (AX:NAB)、ウエストパック銀行 (AX:WPC)はNZ中銀とのこれまでの協議で、資本規制強化によってNZ事業について再考を余儀なくされる可能性があると警告していた。
新規制では、同4行のNZ子会社に求められる自己資本比率は現行の10.5%から18%に引き上げられる。その他の銀行は16%への引き上げが求められる。
中銀によると、4大銀行の自己資本比率は現在、平均で14.1%。
4大銀行に求められる中核的自己資本(Tier1)比率は8.5%から16%に引き上げられる。現在の平均は13.2%。
他の銀行のTier1比率は14%への引き上げが求められる。
中銀は、数カ月にわたる業界との意見交換を踏まえ、資本調達手段についても柔軟性を認めた。
オア中銀総裁は「銀行システムの資本を増やすことで、銀行は景気変動への耐性が高まり、顧客にとって好ましい長期的な結果をもたらす」と述べた。
ベル・ポッターのアナリスト、TSリム氏は、豪4大銀行は豪州国内で、昨年相次いで発覚した不正などを受けて対応を迫られているため、NZ規制について時間的な猶予が必要だったが、一定の猶予を得ることができたと指摘。
「4行は規制強化に対応するのに十分な資本があるはずで、唯一必要とされているのは、NZから豪州に還元する配当の流れを減らすことだ。そうすれば規制に合致できる」とした。
ジェフェリーズのアナリスト、ブライアン・ジョンソン氏は、今回発表された規制は予想よりも若干好ましい内容だったが、ANZを中心に、NZからオーストラリアへの利益還流に影響が及ぶと指摘。「銀行の配当利回りに最も大きな影響が及ぶ」との見方を示した。
豪4大銀行はNZでかなりの規模の利益を稼いでいる。ANZの年次報告書によると、2019年のグループ利益のうちNZで稼いだ利益は全体の22%だった。
ウエストパック銀行、NAB、およびANZは、規制強化に備えて今年度の最終配当を引き下げている。CBAは2月に中間配当を発表する。
ANZのシェーン・エリオット最高経営責任者(CEO)は「引き上げられた自己資本の必要額は依然としてかなりの規模だ。ただ、追加の資本を調達せずに、強化された規制を順守できると確信している」と表明。
NABは「最終的な影響」は、様々な要因に左右されると指摘。影響を緩和する措置が導入される可能性があるとの見方を示した。
CBAは「顧客とNZ経済の成長を支えながら、規制が財務に及ぼす影響を最小限に抑える」方法を検討すると述べた。
規制強化の発表後、豪銀行株は上昇した。
ムーディーズ・インベスターズ・サービスのバイスプレジデント、ダニエル・ユー氏は、規制強化が銀行の株主資本利益率(ROE)の重しになると分析。「利益率を上げるため貸出金利を引き上げる動きが広がる」との見方を示した。
*内容を追加しました。