情報BOX:米債市場で逆イールド復活、今さら聞けない定義と意味

Reuters

発行済 2020年01月29日 16:37

情報BOX:米債市場で逆イールド復活、今さら聞けない定義と意味

[ニューヨーク 28日 ロイター] - 米国債の価格が今週に入って急騰したため、イールドカーブの一部で長短逆転(逆イールド)が発生した。これは伝統的に米経済にとって、弱気のシグナルとされる。

2年債と5年債の利回りが27日、昨年12月以降で初めて逆転。28日には昨年10月以来となる3カ月物政府短期証券(Tビル)と10年債の逆イールドが見られた。

長期債の利回り低下は、中国発の新型コロナウィルスの感染拡大による経済的な悪影響を懸念した投資家が、安全資産に資金を移動させたため。昨年12月、米中が貿易協議の「第1段階」合意に達し、世界の経済成長と物価は上向くとの楽観ムードが年明けに生じていたが、水を差されたと言える。

3カ月物Tビルと10年債の利回り差は注目度が高い。これまで逆イールド化はずっと、その1-2年後に景気後退(リセッション)が起きるという信頼できる先行指標になってきたからだ。2007-09年の世界金融危機以後に逆イールドが生じたのは、昨年3月が初めてだった。

もっとも逆イールドに続いてリセッションが到来するとしても、タイミング自体は分からない。世界的な金融緩和政策のおかげで、景気の落ち込みが顕現化する時期が先延ばしされる可能性もある。

また、一部のアナリストは、大半がマイナス利回りとなっている欧州や日本の国債に比べて米国債に投資妙味があることが、そうした条件がない場合よりも米長期債利回りを低水準にとどめる役割を果たしており、逆イールドのリセッションのシグナルとしての正確性を弱めていると指摘する。

イールドカーブを巡る基本的な知識を以下にまとめた。

◎米国債のイールドカーブとは何か

イールドカーブとは、1カ月から30年まで、あらゆる期間の米国債の利回りの分布をつないだ線で、通常のケースでは右肩上がりになる。長期債の方が、投資家が要求するリスクプレミアムが大きくなるからだ。

短期ゾーンよりも長期ゾーンの利回りが相当高い状態を「スティープ化」と呼ぶ。つまり2年債と30年債の利回り差(スプレッド)は非常に大きくなる。一方、長短スプレッドが小さい状態は「フラット化」で、例えば3年債と10年債の利回りもわずかな違いしか見られない。

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◎逆イールド化とは

めったにないケースとして、イールドカーブの一部もしくは全体が右肩上がりでなくなる。長短利回り逆転(逆イールド)の発生だ。専門家や市場関係者によって、イールドカーブの注目部分は異なるものの、どの部分の逆イールドも、将来の経済成長が弱まるとの見通しを反映している点は共通する。

昨年3月には3カ月物Tビルが約12年ぶりに、10年債利回りを上回る現象が起きた。10月以降は、今週28日に一時逆イールド化した局面を除けば、スプレッドはプラスで推移している。

やはりリセッションの手掛かりとして注視される2年債と10年債のスプレッドは昨年8月、07年以来となるマイナスに沈んだ。9月初めからは、プラスを維持している。

◎なぜ逆イールドに重大な意味があるのか  

逆イールドは、リセッションが迫っていると知らせてくれる昔ながらの指標だからだ。米国債のイールドカーブは過去50年間、各リセッションの前に逆イールドになっている。シグナルとして間違っていたのは、たった1回しかない。

短期ゾーンの利回りが長期ゾーンより高くなるのは、短期の借り入れコストが長期を上回ることを意味する。そうした環境では、企業は操業コストが割高になったと判断し、経営陣が投資を抑制するか棚上げする。消費者の借り入れコストも上がるため、米国内総生産(GDP)の3分の2超を占める個人消費は減速してしまう。

そして最終的に経済が縮小し、失業者が増える。

◎逆イールドが起きる理由は