ECBが量的緩和拡大、利下げは見送り コロナ対応で「財政出動を」

Reuters

発行済 2020年03月13日 01:47

ECBが量的緩和拡大、利下げは見送り コロナ対応で「財政出動を」

[フランクフルト 12日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は12日の定例理事会で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)による域内経済への悪影響に対応するため、量的緩和政策を年末まで1200億ユーロ拡大すると決定した。ただ政策金利は据え置かれ、市場の混乱につながる可能性もある。

新型コロナの感染拡大により数百万人の移動が制限され、金融市場が急落し、企業は供給網の混乱に苦しむ中で、ECBは景気悪化に対応するため、企業に対する超低金利融資拡大や資産購入額の引き上げ、銀行支援を実施すると表明した。

声明では「これらの対策はコロナウイルスの感染拡大により最も影響を受けた企業、特に中小企業への銀行融資を支援する」と指摘。また「年末まで資産購入枠を一時的に1200億ユーロ追加し、資産購入プログラムからの強固な支援を確保する」方針を示した。

<まず財政政策で対応を>

ラガルド総裁は「新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済、およびユーロ圏経済の成長見通しに対する主要な衝撃となっており、これにより市場のボラティリティーは高まっている」と指摘。域内の景気後退(リセッション)の可能性については「新型コロナへの集団的対応の速度や規模にもよる」としたほか「第一義的な対応は何を置いても財政政策であり、金融政策ではない」と述べ、政府による迅速な対応の必要性を強調した。

ECBは域内の金融システムに対する流動性支援を即時提供するために、マイナス0.75%という低金利で従来の長期資金供給オペ(TLTRO)を提供するほか、追加のTLTROも実施するとした。

一方、市中銀行が余剰資金をECBに預け入れる際の適用金利である預金金利は現行のマイナス0.5%に据え置いた。ただ金利ガイダンスは変更せず、追加利下げに含みを残した。ラガルド総裁は利下げが必要な場合はそうすると明言した。

バンク・オブ・アメリカの欧州信用戦略部長、バーナビー・マーティン氏は「今回の決定は(理事会の)総意であり、市場の動きは明らかに失望を反映しているが、ECBが政策対応を巡って他の中銀よりも政治的な制約に直面していることは周知の事実だ」と述べた。

<経済見通しは現況反映せず>

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こうした中、ECBは今年と来年の域内総生産(GDP)成長率予想を引き下げた。また、今回の見通しは欧州で新型コロナウイルスの感染が拡大する前に作成されたもので、おそらく現在の状況を反映していないと表明した。

2020年の成長率は昨年12月時点の1.1%から0.8%に、21年は当初の1.4%から1.3%に引き下げた。22年は1.4%と変わらず。またインフレ率は20年が1.1%、21年が1.4%、22年が1.6%とし、従来予想を据え置いた。

石油輸出国機構(OPEC)にロシアなど非加盟産油国を加えた「OPECプラス」の協調減産体制が崩壊する中、原油価格はこのところ急落しており、北海ブレント原油先物 (LCOc1)は足元33ドル近辺と、昨年末時点の66ドルを大幅に割り込んでいる。原油安は成長や個人消費の支えになる一方、物価の急激な下押しにつながりかねず、原油価格が今後も現在の水準にとどまった場合、物価の伸びは今春にもゼロにまで下がる恐れもある。

<銀行の資本規制も緩和>

ECBはまた、新型コロナウイルス対策として、金融機関による一部資本要件の未達を容認すると表明した。対象となる資本要件は、第2の柱ガイダンス(P2G、ストレス時でも十分な資本を維持するための基準)、資本保全バッファー(CCB、ストレス時に取り崩し可能な資本)、流動性カバレッジ比率(LCR、ストレス時の流動性需要に対応するための基準)。