アングル:持続化給付金、委託費巡り野党追及 2次補正分も同法人の可能性

Reuters

発行済 2020年06月05日 18:05

更新済 2020年06月05日 20:18

清水律子

[東京 5日 ロイター] - 新型コロナウイルス対策の「持続化給付金」の事業委託について、一部野党が不透明だと問題視し、政府が説明を迫られる事態となっている。持続化給付金事業は、8日から国会審議が始まる第2次補正予算にも計上されており、事務委託費の上限は850億円。事業の継続性から「(1次補正と同じ)一般社団法人サービスデザイン推進協議会」に発注することが「現実的」(政府関係者)との声が強いものの、国会での追及は強まりそうだ。

<応募は2社、入札に疑念も>

持続化給付金事業は、売り上げが前年同月比で50%以上減少している事業者を対象に、中小企業等の法人は200万円、フリーランスを含む個人事業者は100万円を上限に現金を給付する制度。1次補正予算では150万件に給付することを前提に2兆3176億円の予算が確保された。事務委託費は769億円で「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」が受託。受注金額の97%にあたる749億円で電通 (T:4324)に再委託している。 

4月8日の競争入札公示前に同協議会が理事会で入札を決めていたことなどが分かっており、「入札」が形だけのものだったのではないかとの疑念が持たれている。この時の入札には、同協議会を含め2社が応札している。経産省関係者は、例のない規模の給付金事業で、早期に給付することが求められる中、4月2・3日に事前ヒアリングという形で話を聞いていたことも認めている。 

<迅速な給付必要、「協議会」にはノウハウ>

経産省によると、今回の案件では、膨大になる給付金をいかに早く届けるか、いかに効率的に行うかという仕事が求められていた。過去に補助金支給などの業務を行ったことのある同協議会には、審査のための人員がどの程度必要になるか、サポートセンターは何カ所くらい設置すればよいかなどの点で、それなりのノウハウがあったという。受託した企業は、企画や工程管理、振込業務といった「コア業務」の遂行と「責任」を負うことになる。

電通自身はこの案件に直接応札していない。上場企業である電通に、まとまった規模の給付金が預かり金の形で出入りすると、投資家からみて、非常に不自然な形になるという説明を、電通が行っているという。

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同協議会からの再委託に対し、電通グループの広報担当者は「国のガイドラインを順守した合法的な受託業務であり、業務完了後には、事業実績を取りまとめ報告し、それが認められた段階で初めて精算が行われる」とコメントしている。

<サービスデザイン推進協議会>  

「サービスデザイン推進協議会」は2016年5月16日に電通、パソナグループ (T:2168)、トランス・コスモス (T:9715)によって設立された。設立日したその日に公募が開始された経産省の「おもてなし規格認証事業」の一般競争入札に応募、落札した。この事業は、電通と電通国際情報サービスに外注している。また、同年には「IT補助金事業」も受託。これは、電通、電通ワークス、みずほ銀、NTTデータ、一般社団法人情報サービス産業協会に外注している。

同協議会は、法律で義務付けられた決算公告を、設立後一度も行っていなかったことも明らかになっている。梶山弘志経産相は5日、「法令にのっとった開示が行われていなかったことは大変遺憾。早急な対応を要請している」と述べている。

<2次補正分の公募未定、協議会へ再度発注か>

「持続化給付金」は2次補正で1兆9400億円を追加計上。収入を「雑所得」や「給与所得」で計上していたフリーランスも持続化給付金の対象とすることなど制度を拡充したことも含め、追加の予算計上となった。これに関する事務委託費は850億円。現時点では「公募するかどうか未定」(経産省関係者)という。ただ「予算成立後すぐに申請を受け付け、支払業務を開始できるようなシステムを短期で作り上げ、それが安価というのは見込めない」(前出の政府関係者)ことから、現状のシステムやコールセンター、サポートセンターなどを有効に使うためには「サービスデザイン推進協議会」に発注する可能性が高い、という。

梶山経産相は5日、持続化給付金事業の事務費について、「現在の(1次補正での)契約額の範囲内で当面継続できるものと承知している」としたうえで「(サービスデザイン推進)協議会ありきで随意契約を行うことは考えていない」と発言。「今後、契約額に不足が生じると分かった段階で透明性、公平性を確保した手続きを経て適切に対応したい」と述べた。

事業委託が不透明だと野党が追及する中で、梶山経産相は給付金事業の入札に関連する資料を来週初めにも国会に提出する考えを示している。

<Gotoキャンペーン、公募いったん中止>

事務委託費については、もう一つ問題が指摘されている。新型コロナ収束後に旅行や飲食の消費を喚起するために1次補正予算に1兆6794億円が計上された「Gotoキャンペーン」。そもそも、この段階で収束後の消費喚起策の必要性があるのかという議論もあった予算だが、事務委託費は上限3095億円で、事業費の18.4%。

公募は6月8日が締め切りになっていたが、経産省は5日、いったん公募を中止すると発表。これまでひとつの事務局を考えていたが、構造が複雑になるため、観光、飲食、イベントという3つの分野で各省庁がそれぞれ事務局を選ぶ形に変更する。経産省関係者は「今から各省が検討する。できるだけ早く準備する」とした。公募を中止したことで、キャンペーン実施時期にも影響が及ぶ可能性も出てきた。