アングル:次の危機に備える投資、金と国債だけでは時代遅れ

Reuters

発行済 2020年06月11日 16:08

[ロンドン 9日 ロイター] - 危機に備えようと思えば主要7カ国(G7)の国債と金を買うのがこれまでの投資の鉄則だった。しかし新型コロナウイルス危機により、それだけでは不十分なことが明確になり、従来よりも幅広い資産を探す動きが加速している。

多様なセクター、通貨、国への投資を義務付けられている「マルチアセット」型ポートフォリオの運用担当者は、社債や中国国債に目をつけている。

株価が荒れた時、日米独の国債がリスクを十分に相殺できるかどうかは、以前から議論の余地ありとされてきた。利回りが激しく下がった今、株価が下落してもこれら国債の値上がり余地は限られ、安全資産としての価値を生み出していた株式との逆相関が実質的に失われたのではないかと、多くの市場関係者は恐れている。

米国債は今般の危機でも大幅に値上がりし、安全資産としての信頼性が維持されていることを示したし、米独その他先進国の国債は、デフォルト(債務不履行)を起こさず容易に売り買いできるとの確信に基づき、今後もポートフォリオ内で要の役割を果たすだろう。

しかし世界の株価が荒れた3月9日から19日には米国とドイツの10年国債価格 (US10YT=RR) (DE10YT=RR)がそれぞれ9%と7%下がり、世界で最も安全な資産でさえパニックの餌食になることが分かった。

2011年のユーロ債務危機時にドイツ国債の価格が大幅上昇したのとは様変わりだ。

ノーザン・トラスト・アセット・マネジメントのウーター・ストルケンブーム氏は「状況が変化しているのを感じる」と言う。「この環境では国債だけに頼るわけにはいかない。リスクを制御できる資産をすべてチェックする必要がある」

株式投資が中心で、国債も大量に保有する伝統的なマルチアセット戦略は今年、過去の危機に比べてうまく機能していない。

BCAリサーチによると、08年の世界金融危機の時、6対4の割合で株式と国債に投資するポートフォリオを持っていると、2%の損失を出していただろう。しかし今年3、4月には、同様の投資が13%の損失を出した計算になる。

国債が株式と逆方向に動きにくくなったのは、08年の危機直前に比べてドイツ10年国債の利回りが500ベーシスポイント(bp)、米国債が350bpも下がっていることに原因がある。

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BCAのダハバル・ジョシ氏は「相関が逆なはずの資産で順相関が強まることは、どんな資産運用者にとっても最悪の悪夢だが、今回の危機の決定的な特徴がそれであり、代替的な資産探しが活発化している」と語った。

<代替資産>

投資家にとって幸いなことに、米連邦準備理事会(FRB)は社債を買い入れ対象に加えた。FRBとIHSマークイットのデータによると、従来の国債20兆ドルに最上級格付けの社債7兆ドルが加わり、「潜在的に安全な」資産が急拡大した。

欧州でも、国債8兆ドルに加えて最上級格付けの社債2兆4000億ドルが、欧州中央銀行(ECB)の買い入れ対象に加わった。

BofAによると、投資家は3日までの週に投資適格級社債への投資を208億ドル増やした。1週間の資金流入として過去最大だ。

ブランディワイン・グローバルのジャック・マッキンタイヤ氏は「投資適格級の社債はいわば新しい米国債だ。FRBの保証を得たのだから」と語る。

一方、フィデリティ・インベストメンツのスチュアート・ランブル氏は、世界株式との相関が低い中国国債への投資を探っている。利回りも10年物で2.8%と、欧米の国債に比べて250─300bp高い。