独ワイヤーカード、不明金が存在しなかった可能性指摘 決算を撤回

Reuters

発行済 2020年06月22日 14:58

[22日 ロイター] - ドイツの決済サービス企業ワイヤーカード (DE:WDIG)は22日、2019年の信託勘定から19億ユーロ(21億3000万ドル)が消えたと先週発表した件で、この現金が初めから存在しなかった可能性があると明らかにした。

また、2019年通年および20年第1・四半期の決算報告(暫定)と業績予想を撤回したことも発表。事業を継続させるため、経費削減、リストラ、傘下部門の売却や閉鎖などあらゆる措置を検討中だとした。

ワイヤーカードは18日、同社の信託勘定のキャッシュ残高のうち19億ユーロの存在を確認できなかったとして、会計事務所EYが会計の承認を拒否したと発表。この金額は、ワイヤーカードのバランスシートの約4分の1に当たり、マルクス・ブラウン最高経営責任者(CEO)は19日、「大規模な詐欺」にあった可能性があると指摘した。[nL4N2DW15W]

だがその直後、同社が融資の確保を急ぐ中でブラウンCEOは引責辞任を発表。不明金の行き先を巡り、フィリピンの2銀行が同日、ワイヤーカードが顧客であることを示す偽造文書の存在を発表し、同社との関与を否定したことで疑念は深まり、株価は急落した。

フィリピン中銀は21日、ワイヤーカードの不明金はフィリピンの金融システムに流れ込んでいないと明らかにした。

フィリピンの2行のうち、バンク・オブ・フィリピン・アイランド(BPI) (PS:BPI)はロイターに対し、偽造文書に署名していた責任者を停職処分としたと明らかにした。もう1行のBDOユニバンク (PS:BDO)はマーケティング幹部が文書を偽造したと中銀に報告した。

中銀のジョクノ総裁は22日、この件について独自の調査を行っていると語った。

会計事務所KPMGは4月の独立監査で、ワイヤーカードの会計について不備を指摘していた。EYによる承認拒否は、KPMGの指摘を確認するものとなる。

ワイヤーカードはドイツで育ったフィンテック企業の成功例として賞賛され、2018年に優良株指数DAXの構成銘柄となった。ただ以前から、財務を巡る懸念が指摘され、空売り筋の標的になっていた。