焦点:米イールドカーブ、1%割れは時間の問題か

Reuters

発行済 2020年08月04日 14:43

[ボストン/シカゴ 3日 ロイター] - 米国債利回りの低下が続く中、イールドカーブ全体が1%を下回る可能性が出てきた。

米国では新型コロナウイルスの感染が拡大。連邦準備理事会(FRB)の利上げは遠い先になるとみられている。

アルファ・エコノミック・フォーサイツのチーフエコノミスト、ブライアン・ベテューヌ氏は「FRBは政策金利を無期限にゼロ付近に維持する、と誰もが予想している。このため、30年債利回りは信じがたいほど低い水準になっている」と述べた。

米30年債利回り (US30YT=RR)は3日時点で1.25%付近。

トレードウェブは先週、30年債利回りの低下で、イールドカーブ全体が1%を下回る状況が近づいていると指摘した。

ジャナス・ヘンダーソンのグローバル債券共同ヘッド、ニック・マロウトソス氏は「利回りの低下圧力は当面続くだろう。(米国外の債券利回りの水準を踏まえれば)イールドカーブ全体が1%を下回るのは時間の問題だ」と指摘。

「利回りが付くものであれば、どれほど低くても追い求めるという投資家の姿勢の表れだ」と述べた。

米10年債利回り (US10YT=RR)が直近で最後に1%を上回ったのは3月20日。先週は終値ベースで史上最低付近に落ち込んだ。20年債利回りは、先月30日に1%を割り込んだ。

トレードウェブはリポートで「(第2・四半期の)米経済が過去最悪のマイナス成長となったことが背景だ」と指摘する。

一部のアナリストは、FRBが今後の国債買い入れで、長期ゾーンの比重を高める可能性があると予想。そうなれば利回りに追加の下落圧力がかかり得る、とトレードウェブは指摘している。

TDセキュリティーズの米金利担当シニアストラテジスト、ゲンナジー・ゴールドバーグ氏は、イールドカーブ全体が1%を下回れば「時代を象徴」する出来事になると予想。「中央銀行がマネーの蛇口を開けて、利回りに低下圧力をかけている」とした上で、これは景気回復に寄与するだろうとの見方を示した。

ただ、同氏によると、現在予想されている追加の景気対策と、米財務省が5日に発表する四半期定例入札(クォータリー・リファンディング)条件が、利回りの下落圧力を和らげる要因になることも考えられる。

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前回5月公表の四半期定例入札条件では、20年債を新たに発行することが発表された。

ナットウエスト・マーケッツは7月29日のリポートで、財務省が今回も30年債を積極的に発行するかどうかが、1つの問題だと指摘している。

30年債利回りは過去最低水準には接近していないものの、直近では7月6日に1.48%でピークを付けて以降、着実に低下している。

30年債利回りが1%を下回ったのは、米国で新型コロナ危機が明確になった3月9日のみ。この時はイールドカーブ全体が一時的に1%を下回った。

イールドカーブの長期ゾーンはインフレリスクに敏感に反応する。現在のインフレ率はFRBが目標とする2%を大幅に下回っており、パウエルFRB議長は先月29日、「これは基本的にディスインフレ・ショックだと考えている」と発言した。

インフレ調整後の実質利回りも記録的な低水準となっている。10年物のインフレ連動国債(TIPS)利回り (US10YTIP=RR)は現在、1%を超えるマイナス。