ETF買入、デフレマインド払拭に効果=中村日銀審議委員

Reuters

発行済 2021年02月10日 11:24

更新済 2021年02月10日 12:27

[東京 10日 ロイター] - 日銀の中村豊明審議委員は10日、高知県金融経済懇談会(オンライン形式で開催)であいさつし、政策点検の焦点の1つとなっている上場投資信託(ETF)の買い入れについて「株式市場の不安定化がデフレマインドにつながりやすい日本の特異性を踏まえると、そうしたマインドを払拭する上で効果を発揮してきた」と評価し、今後も必要な政策ツールだとの認識を示した。

ただ、「ETFに限らず、大量の資産買い入れや保有の長期化によって、市場機能に影響が生じ得ることにも留意が必要だ」と指摘した。

日銀は3月の金融政策決定会合をめどに点検結果を公表する。中村委員は、結果がどうなるかについては言及せず、「引き続き効果や副作用を慎重に点検したうえで検討したいと思うが、この先も起こり得る経済・物価・金融情勢の変化に対して、タイムリーかつ効果的に対応できるよう準備しておくことが重要だ」と述べるにとどめた。

<原油安・宿泊料値引き、将来の物価上昇の素地に>

足元では、原油価格の下落や政府の観光需要喚起策「GoToトラベル」事業による宿泊料の割引などで消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は前年比マイナス圏の推移が続いている。

中村委員は、原油安や宿泊料の値引きは「消費者の購買力上昇などを通じて、いずれは消費者物価に対してプラスに作用する」と指摘。「コアCPIがマイナスということだけに着目するのではなく、需要の変化を含めた品目ごとの動向やミクロ情報など実態をしっかり確認、分析することがいっそう重要になっている」と述べた。

<地域金融、企業は県域を越えて拡大志向>

中村委員はあいさつの中で、デジタル化や脱炭素化という今日の課題をチャンスに変え、企業が成長していくことが重要だと強調した。

日立製作所の経営に携わった経験から「自前主義にとらわれず、異なるバックグラウンドや知見を持つ人材の活用などを通じて経営リソースを強化し、一歩先んじて変化に挑戦し、自社の事業構造を先送りすることなく改革して、成長を実現することが重要だ」と述べた。

企業の成長を支える金融のうち地域金融については、地域金融機関の営業地域が都道府県単位で区切られがちな半面、「人口減少が進み、特定地域での事業成長が難しくなる中で、生産性向上と規模拡大を追求する企業は多い」と指摘。

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地元の中小企業の成長に向けた取り組みを持続的にいっそうサポートしていくため「地域金融機関の経営統合や合併も1つの選択肢だし、他業態を含むアライアンスなども有力な手段だ」と述べた。