日銀点検を読む:ETF買入、「テーラーメイド」に変更を=原田・中大教授

Reuters

発行済 2021年02月17日 16:56

[東京 17日 ロイター] - 中央大学商学部の原田喜美枝教授は17日、ロイターのインタビューで、日銀が政策点検で見直すとみられる上場投資信託(ETF)買い入れについて、対象を一般投資家でも購入可能なものではなく買い入れのために特別に組成された「テーラーメイド」のETFに変更すれば副作用の軽減につながるとの見方を示した。買い入れ方針については、年6兆円に戻すと明示すると市場にマイナスの影響が生じるとして、「原則6兆円、最大12兆円でより柔軟に買い入れという現状維持で行くしかないのではないか」と述べた。

<テーラーメイドなら信託報酬を抑制可能>

原田教授はETFについて「(運用会社に)テーラーメイドで作ってもらえば、20ベーシスポイント(bp)程度払っている手数料を5bp程度で作ってもらえる」と指摘。「日系大手の運用会社に流れている補助金のような信託報酬を下げることができる」と述べた。日銀の黒田東彦総裁は1月の参院予算委員会で、ETF買い入れに伴う運用会社への手数料が20年度上期までの累計で約2000億円に上るとの試算を明らかにしている。

原田教授は、テーラーメイドのETFを組成するに当たって、時価総額が極端に小さい銘柄や浮動株比率が低い銘柄を除外すると「ミクロ面への弊害もだいぶ軽減される」とみている。

<議決権行使、運用会社任せはあってはならない>

日銀のETF買い入れが市場機能に与えるデメリットとして原田教授は、浮動株比率が少ない銘柄や小型株への影響を挙げた。浮動株比率の低い銘柄については「日銀はバイ・アンド・ホールドなので、購入分が固定株化してしまう」と指摘、日銀の買い入れによって浮動株比率が一段と低下すると懸念を示した。

小型株については、日銀がTOPIX連動型のETFを買っていくことで「業績などで注目されているかどうかにかかわらず、株価は上がっていく」とした。

原田教授によると、外国人投資家から「ファンダメンタルズに基づかない値段がついている日本のマーケットはなかなか買いにくい」との声が出ているという。

ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストの推計によると、日銀の保有ETFは時価ベースで1月末時点で47.1兆円。昨年11月に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の保有額を超え、日本株の最大の保有主体になった。

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ETFを通じて株を保有している企業のガバナンスに対する、議決権行使を通じたけん制について、日銀は「スチュワードシップ・コード(機関投資家の活動指針)を受け入れた運用会社によって、適切に議決権が行使されている」(黒田総裁)と説明してきた。しかし、原田教授は、日銀は日本株の筆頭株主に浮上したにもかかわらず運用会社任せとするのはあってはならないことだと指摘。「GPIFは真のアセットオーナーとしてのスチュワードシップコードを順守しているが、日銀は企業経営には関心がなく、政策として購入しているだけなので運用会社任せになっている」と批判した。

<「大学ファンド」への売却を>

原田教授は「長期的に見ればETF買い入れが持続可能ではないことは、だいぶ前から言われていた」と指摘。「日銀がリスク資産をバランスシートに載せたままというのは円の信認にもかかわる」とし、「(保有ETFを)別会社に移すなどの方策を中長期的には考えなければいけない」と述べた。

日銀OBなどから保有ETFを売却制限付きで個人に譲渡する案も出ているが、原田教授は証券口座を保有している人は所得水準が比較的高い層のため「より格差を助長しかねない」と指摘。個人への譲渡よりも、政府が創設する10兆円規模の「大学ファンド」に売却する方が得策との見方を示した。