焦点:本命視される9月解散、首相が狙うシナリオ 感染次第で後ずれも

Reuters

発行済 2021年06月23日 14:54

竹本能文

[東京 23日 ロイター] - 菅義偉首相(自民党総裁)が9月前半にも衆議院の解散に踏み切るとの観測が与党内で強まっている。9月末の党総裁任期に先立つ衆院選で勝利を得られれば無風での総裁再選が視野に入る。もっとも東京五輪・パラリンピック後も新型コロナ感染が収束していなければシナリオ通りに進むかは見通せない。9月解散を断行できず、衆院選は11月になるとの指摘もなお残っている。

複数の与党関係者によると、首相がパラリンピック閉会後の9月前半にも衆院解散に打って出るとの見方が強まっている。「今月16日に通常国会を閉じ、即座に(選挙対策として)地元に帰った議員も多い。永田町はもぬけの殻だ」と、ある自民関係者は言う。この党関係者は「9月解散、10月衆院選は与野党ともに既定路線」とも語る。

衆院議員は10月21日に任期満了を迎える。一方、自民党総裁としての菅首相の任期は9月末となっている。

自民党の総裁公選規程では総裁選の日程は任期満了の1カ月前までに決定し、公表するとしているが、「菅首相の続投を希望する議員が(党総裁選の)後ろ倒しを働きかける動きもあり、(実際に後ろ倒しする場合は)8月末までに党幹部が話し合いの場を設ける可能性がある」と、別の党関係者は語る。

衆院選を勝利に導けば、その後の党総裁選は無派閥の菅首相にとって有利に働く副次的効果がある。首相は17日の記者会見で「(総裁としての)任期はこの秋と決まっている」とし、衆院解散について「それまでのどこかで判断しなければならない」と述べた。無風での再選も視野に入れたシナリオとして首相自身も9月中の解散に前向きとされる。

もっとも五輪開催後にコロナ感染者数が急増したり、首相がコロナ対策の本丸に掲げるワクチン接種が思うように進展しないようだと政権の求心力が低下し、党内分裂を招く事態に発展しかねない。衆院選前に「選挙の顔を変えるべきだ」と、予定通りの党総裁選を求める声が強まる可能性もある。

ロイターが閲覧した文書では、10月21日の任期満了まで臨時国会を開会し、同日に解散した場合は解散から40日以内に総選挙が行われることになり、最も遅い日程で11月16日公示、同28日投開票となる。自民党の下村博文政調会長は16日のBS番組で、コロナの状況次第では「11月の衆院選もあり得る」としており、有力視される9月解散、10月衆院選以外の選択肢も排除していない。

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<経済対策に関心>

市場では、政局だけではなく、コロナ後の成長分野への投資も含めた経済対策の有無にも関心を寄せている。

岡三証券の会田卓司チーフエコノミストと田未来エコノミストは連名で「秋までのタイミングで新型コロナウイルスに関する新たな対策と収束後を見越した経済成長促進策を含む経済対策が計画され、臨時国会を開いて補正予算を成立させるとみられる」とする顧客向けのレポートを21日、公表した。

一方、みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは「9月にはワクチン接種者が国民の4割を超え、コロナ対策よりも、骨太方針に沿った中期的な成長戦略をグリーンやデジタルの分野で2022年度本予算などに盛り込んでいくことのほうが首相の関心は高いだろう」とみている。