米経済、8月にかけてやや減速 デルタ変異株拡大が重し=連銀報告

Reuters

発行済 2021年09月09日 05:09

更新済 2021年09月09日 08:45

[ワシントン 8日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は8日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、新型コロナウイルス感染再拡大が外食や旅行、観光に響き、米経済成長は7月初旬から8月にかけて「緩やかな」ペースにやや減速したとの認識を示した。経済全体が新型コロナのパンデミック(世界的大流行)後の物価上昇や労働力不足に苦しんでいるとした。

報告では「経済活動の減速はおおむね、新型コロナのデルタ変異株の感染拡大を受けた公衆衛生上の懸念を反映し、外食、旅行、観光が大部分の地区で抑制されたことが要因になった」とした。

ベージュブックは12地区連銀の情報をまとめており、9月21―22日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)での審議内容の一部となる。報告では、労働力への強い需要がありながら、離職率の上昇や早期退職、育児の必要性、求人交渉の難しさ、失業給付の拡充により、採用がより困難になっていると指摘。いくつかの地区では、新型コロナウイルスのデルタ変異株の感染拡大により職場復帰の日程が延期された点も指摘した。

アトランタ地区連銀は、求人が豊富なため、各レストランは従業員が数日で連絡なしでやめ次のレストランに移ってしまう「ゴースティング、コースティング」に悩まされていると指摘した。

物価は引き続き上昇した。「物価上昇率は高止まりしていると報告された」とし、FRBの各地区連銀の大部分は金属、運送、建設資材、その他の産業用消耗品のコストが緩やかに、または急激に上がっているとした。

FRBは「原材料不足が広範囲に及んでいるため、仕入れ価格の上昇圧力は引き続き広範囲に及んでいる」と報告。産業全体の頭痛の種となっている。

リッチモンド地区連銀は「結婚式でドレスが時間通りに届かなかったためいくつかの結婚披露宴で返金したとの報告があった」と言及。セントルイス地区連銀の地域では「ある地場のビール醸造所はサプライヤーが注文から納入までにアルミパレットの価格を2倍に引き上げたと報告した」という。

秋には新型コロナのパンデミックからの回復がより明確になることが期待されていたが、今回の報告書はFRBにとって米国経済が厳しい状況であることを示す結果となった。

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物価上昇はFRBが期待していたようには急速に鈍化せず、持続的な上昇のリスクが続いている。

一方、「全ての地区で全体的な雇用増加が続いている」との表現もみられた。8月の新規就業者数が23万5000人にとどまったことが、デルタ型まん延による広範な雇用減速の兆しではないかとの懸念を和らげた。アナリストは新規就業者数が70万人超になると予想していた。

<雇用推移の確認必要か>

FRBは新型コロナのパンデミック後の金融政策への移行の第一歩として、毎月1200億ドル買い入れている量的緩和の縮小時期を検討している。年内に決定する可能性は依然高いものの、8月の雇用統計を受けて、雇用の順調な推移をさらに確認することが必要になる可能性がある。

ニューヨーク地区連銀のウィリアムズ総裁は8日、「デルタ株は個人消費と雇用の重しとなっており、経済成長のペースが減速しているようにみえる」と語った。

ウィリアムズ氏は、FRBが新型コロナ対策の一つを縮小する経済環境が整ったと判断する前に、労働市場で「さらなる改善を見たい」と述べた。「年内に資産購入の縮小を始めるのは適切かもしれない」としながらも、「健康と経済への影響の両方の観点から、パンデミックが終わっていないことは明らかだ」と結論付けた。

8日に発表された7月の求人数は過去最高の1093万件となり、夏にかけての雇用市場の伸びが力強いことを示した。

この数値は失業者数を上回っており、雇用が順調に推移すれば、FRBがテーパリング(量的緩和の縮小)を近く始められると一部の当局者は確信している。セントルイス地区連銀のブラード総裁は英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)に7日掲載されたインタビューで「労働者の需要は多くあり、求人数の方が失業者数より多い」と指摘した。