アングル:混戦の自民総裁選、野田氏参戦も不透明要因

Reuters

発行済 2021年09月16日 19:49

竹本能文

[東京 16日 ロイター] - 17日告示の自民党総裁選は河野太郎行政改革担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行の4人が争う構図となった。これまでのところ、多くの派閥で世論調査で人気の高い河野氏と安定感のある岸田氏に支持が割れ、高市氏も安倍晋三前首相の支援をバックに保守層の支持を集めている。河野氏先行との調査もあるが、野田氏が参戦したことでさらに票が割れることとなり、開票まで結果が見えない情勢となっている。

<若手が派閥横断「党風一新の会」設立>

自民党総裁選は383票の国会議員票と、全国113万人の自民党員・党友による383票(ドント式で分配)との合算で争われる。どの候補も過半数に達しない場合は、383の議員票と、各都道府県連代表の47票による決選投票となる。

今回予想が難しいのは、主要派閥が自主投票となり、国会議員票の行方が読めなくなっているためだ。主因は直後に控える衆議院選挙だ。

従来の総裁選では派閥の方針に従わない議員を冷遇するなどの圧力があったが、今回は「人気の高い河野氏が選挙の顔として首相にならないと自分が落選してしまう」(与党関係者)と懸念を抱く若手議員が多く、締め付けが効かない状態となっている。

その結果、自民党に7つある派閥のうち、岸田氏の所属する岸田氏以外は事実上自主投票の方針となった。

さらに最大派閥の細田派に属する福田達夫衆院議員が代表世話人となり派閥横断の集団「党風一新の会」が10日、設立された。参加した約90人の議員はみな1─3回生で、3回生以下の議員全体の7割に及ぶ。最大派閥の細田派(96人)に次ぐ規模の参加者が派閥の枠を超えて投票する可能性がある。「衆院選を前に選挙基盤の弱い中堅・若手を中心に河野氏の人気が高い」(閣僚周辺)という。

こうした中、世論調査で次期首相として人気の高い石破茂元幹事長は15日、出馬断念と河野氏支援を打ち出した。

<菅氏は河野支援、決選投票なら岸田氏優位の見方>

党内第3派閥の竹下派では衆・参両院で河野支持が「20人程度」(閣僚周辺)とみられるが、参院では「来年夏の参院選まで安定した政権運営の期待できる岸田氏の人気が相応にある」(中堅幹部)という。

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河野陣営は、世論調査で同程度に人気の高い石破氏の支援を得て、党員・党友票で「圧倒的多数を取り、最初に過半数を押さえ勝利に持ち込みたい」(石破派幹部)考えだ。菅義偉首相は従来から河野氏を後継首相として推しており、今回は裏方として支援する。河野陣営からは「官房長官時代の切れ味が復活している」と評されている。

岸田陣営は、脱原発論者だった河野氏の政策運営を懸念する声が産業界に多いとして、党員・党友票も「石破支持票がみな河野氏に流れることはない」(中堅幹部)とけん制する。「農業、建設関係者の党員票が河野氏に多く流れることはない」(閣僚周辺)との解説もある。

決選投票にもつれ込めば「共に安倍氏が支持する高市・岸田氏が2位、3位連合を組むことで、逆転できる」(関係者)との声も多い。安倍前首相は高市氏を支援しているが「決選投票で岸田氏が残れば岸田氏を支援する」(与党幹部)との見方だ。

<野田氏出馬も波乱要因>

高市氏は当初「泡沫候補」(与党幹部)との冷めた見方もあったが、14日の選挙対策本部設置集会に約40人の国会議員を集め、党内を驚かせた。これをもって「総裁選は決選投票に進む公算が大きくなった」(政府関係者)との解説も聞かれる。

野田氏は過去3回、20人の推薦集めができず出馬を断念したが、今回は告示直前の16日に確保し、出馬を決めた。「議員票は少ないだろうが党員・党友票は(小泉政権下で郵政民営化に反対したため)郵政関係者から一定の得票が見込まれる」(与党幹部)という。野田氏の出馬により、「支持層が重なる河野氏の票が一定程度取られる」(与党関係者)との見方も浮上している。

複数の与党関係者によると11日時点の党内調査で、国会議員票は河野氏50票、

岸田氏70票、高市氏20票、党員・党友票は河野氏180票強、岸田氏120票強、高市氏60票程度の順だった。単純合算すると河野氏が230票強と先行している。