焦点:FRB副議長人事で挫折、バイデン氏は穏健派の新候補探しか

Reuters

発行済 2022年03月16日 13:41

[ワシントン 15日 ロイター] - サラ・ラスキン元連邦準備理事会(FRB)理事が15日、FRB副議長(金融規制担当)への指名を辞退したことで、ホワイトハウスは穏健派の新候補を選ぶか、当面の間このポストを空席にするかの選択を迫られるかもしれない。

関係筋によると、ラスキン氏はバイデン大統領に宛てた書簡で辞退を申し出た。

ラスキン氏の指名を巡っては、同氏が石油・天然ガス企業への銀行融資を抑制するとの懸念から民主党中道派のジョー・マンチン上院議員が14日に不支持を表明。民主、共和両党が50議席ずつで拮抗する上院において、共和党議員はラスキン氏の指名反対で結束しているため、マンチン議員が立場を明らかにしたことで指名承認の可能性は事実上消えた。

ラスキン氏の線が無くなったことで、バイデン氏は、民主党穏健派と急進派の両方に受け入れられる候補を選ぶという難しい課題に直面する。

キャピタル・アルファ・パートナーズのマネジングディレクター、イアン・カッツ氏は14日、「ホワイトハウスが金融規制担当副議長に別の候補を選ぶと決めた場合には、より穏健派と見られる人物になるだろう」と予想した。

ロイター15日、ラスキン氏にコメントを求めたが、今のところ返答はない。

以前、このポストの候補に名前が挙がっていたのは、ネリー・リアン財務次官、アトランタ地区連銀のボスティック総裁、マイケル・スー通貨監督庁(OCC)長官代行、オバマ政権時代に消費者金融保護局(CFPB)長官を務めたリチャード・コードレー氏ら。

ブローカレージ会社BTIGの政策ディレクター、アイザック・ボルタンスキー氏は14日のノートで、元財務次官で最近までジョンズ・ホプキンス大学の管理部門幹部だったメアリー・ミラー氏が新たな候補に浮上したとの見方を示した。

ボスティック、コードレー両氏のコメントは得られていない。ミラー氏とは現在のところ連絡が取れていない。リアン、スー両氏の報道官はコメントを控えた。

<急進派にとっては挫折>

ラスキン氏はエリザベス・ウォーレン上院議員など、金融機関への監督厳格化に熱心な急進派から支持されていた。しかし、ラスキン氏が以前、規制当局は気候変動関連の金融リスクに関して金融機関をもっと積極的に監視すべきだ、と示唆する発言を行っていたことから、エネルギー業界は同氏の指名に強く反対していた。

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石油・天然ガス業界のロビー活動にとって、ラスキン氏の指名辞退は勝利と言える。しかし、FRB理事は近く民主党色が強まる見通しで、FRBの姿勢が根本から変わるとは考えにくい。ラスキン氏の辞退をきっかけに、いずれも経済学者のリサ・クック、フィリップ・ジェファーソン両氏の理事指名承認に道が開けるはずだ。

コーウェン・ワシントン・リサーチ・グループのアナリスト、ジャレット・シーバーグ氏はラスキン氏の辞退について「チーム・バイデンがFRBを支配することによる、大手銀行にとってのリスクは変わらないはずだ。計画は従来通り進められるだろう」と予想した。ただ、大手銀行の監督強化が遅れると予想するアナリストもいる。

バイデン氏はパウエルFRB議長も再任指名した。パウエル氏は上院で超党派の支持を得ており、承認が広く予想されている。

バイデン氏が金融規制当局の高官に指名した人物が、上院で却下されるのはラスキン氏で2回目となる。OCC長官に指名した急進派の学者ソーレ・オマロバ氏は昨年、民主党穏健派の支持が得られず指名を辞退した。

こうした失敗を糧に、民主党の急進派と穏健派が新たな副議長候補の支持で結束できるかどうかは不明だ。

ホワイトハウスにとっては、金融規制責任者のポストを空席にして他のFRB理事らに代行させる選択肢もある。これはオバマ政権が採用した手法だ。

ボルタンスキー氏によると、次期理事と目されるクック、ジェファーソン両氏がFRBの監督規制委員会メンバーとなり、暫定的に委員会を率いる可能性がある。一方、バイデン氏が副議長に指名したブレイナードFRB理事(民主党)が、非公式に金融規制担当者を務めるとみる関係者もいる。