アングル:多様化進む米FRB、地区連銀が先行 課題なお

Reuters

発行済 2022年05月21日 08:02

[16日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は108年の歴史上、ほとんどの期間において現職パウエル氏のような白人男性が議長を務めてきた。しかしこの夏、金融政策を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)構成メンバーにおいて史上初めて白人男性が半数未満に減るなど、多様化が徐々に進みつつある。

9月までに、FOMCメンバー18人のうち8人は女性に、5人は非白人となる。いずれも過去最高の人数だ。その数カ月先には、さらに構成人員が多様化する機会が控えている。

その上、100人余りいる地区連銀の取締役は、これまでになく米国民の多様性を反映した構成となりつつある。取締役は定期的に、FOMC幹部らに経済展望を提供する役割を果たしている。

ただ、依然として多様化が大きく遅れている部分もある。

例えば、FOMCメンバーには今も過去にも中南米系の人物がいない。またFRBの最新データによると、政策決定の土台となる経済分析に携わる博士号取得エコノミスト945人の55%は白人男性だ。

性別と人種面で多様化が進む地区連銀取締役会でも、メンバーの75%以上は銀行、金融、財界の人物で占められている。これはセンター・フォー・ポピュラー・デモクラシーが12日公表したリポートで分かった。

財界出身者の75%は、米企業の過半数を占める中小企業ではなく大企業の出身者だ。

このためFRB、そしてパウエル議長への批判は絶えない。上院はこのほどパウエル氏の再任を承認した。しかしキューバにルーツを持つボブ・メネンデス上院議員(民主党)は、ダラス地区連銀が次期総裁にヒスパニック系ではなく白人の女性を指名したことに反発し、パウエル氏の承認に反対票を投じた。

メネンデス氏は反対投票に際し、FOMCに中南米系委員がいないのは「FOMCが経済政策について重要な決定を下すたびに、米国民の5分の1の声がかき消されている」ことを意味すると述べた。

<多様性と信頼感の関係>

FRBは現在、インフレ退治のために積極的な利上げに取りかかっている。利上げは景気を減速させるとの見方が多い。失業者が増えると、非白人や教育水準の低い低賃金労働者が最も強い打撃を被るのがこれまでの常だった。

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そうした中でパウエル氏らは国民に対し、利上げは痛みを伴うが、インフレを加速させてしまうよりも最終的には痛みを小さく抑えられる、と訴えかけている。

イエール大経営大学院の金融安定プログラム上席助手、カレブ・ナイガード氏は「指導者グループの構成がかつてないほど米国の人口構成を反映するようになれば、FRBは国民の目から見て信頼感を維持しやすいだろう」と述べた。

<道半ば>

とはいえFRBの多様化はまだ道半ばだ。

FRBの博士号取得エコノミスト945人中、女性は4分の1にとどまり、その過半数は白人。男女合わせてアジア系は159人、ヒスパニックもしくはラテン系は89人、黒人はわずか14人、2つ以上の人種を持つエコノミストは7人となっている。

ただ、12の地区連銀の取締役会は、多様化という点でもっと大きな成功を収めている。この変革は、地区連銀取締役の3分の2を直接選ぶか、少なくともある程度口出しができるFRBが主導したものだ。

これらの取締役は地区連銀総裁を選ぶ権限があり、その影響力は既に現れている。

ボストンとダラスの地区連銀はいずれも、白人男性の総裁が倫理上のスキャンダルで昨秋に退任し、後任に女性を選んだ。

ボストン地区連銀のスーザン・コリンズ次期総裁は、黒人女性として初の地区連銀総裁となる。ダラス地区連銀の取締役会はこのほど、ニューヨーク連銀副総裁のローリー・ローガン氏を次期総裁に指名した。同氏は白人だ。

カンザスシティとシカゴの地区連銀も近く、任期満了に伴い総裁が交代する。現在の総裁は白人女性と白人男性となっている。

ホワイトハウスが指名するFRBの理事7人にも変化が起こりつつある。

米上院はこのほど、ミシガン州立大学のリサ・クック教授と、エコノミストでデビッドソン大学教授のフィリップ・ジェファーソン氏のFRB理事就任を承認した。いずれもバイデン大統領が指名した黒人エコノミストだ。