アングル:中国地方政府、インフラ投資前倒しで6月に大規模起債

Reuters

発行済 2022年06月04日 07:31

[北京 31日 ロイター] - 中国の地方政府が6月、総額約1兆5000億元(2250億ドル)もの債券発行を迫られている。新型コロナウイルスで痛手を受けた経済を復活させるためのインフラ投資を前倒しで行うよう中央から促され、その資金を調達しなければならないからだ。

こうした大規模な起債は、国務院(内閣に相当)が先週発表した一連の経済対策に基づく動きだ。もっともアナリストの間では、中国経済を持続的な回復軌道に乗せるにはさらなる対策も必要だとの見方が広がっている。シンクタンクなどからは、年後半には中央政府が積極的に国債を発行して投資を行うべきだといった声も聞かれる。

国務院は31日、地方政府に対して6月末までに今年の地方特別債(専項債、公益性を持つインフラ投資の資金調達に使われる債券)の発行枠3兆4500億元(5180億ドル)を確実に消化するよう指示した。投資促進が狙いで、当初予定より3カ月早い消化を指示されたことになる。

5月27日時点で地方政府が発行した専項債は1兆8500億元と枠全体の54%だった。今後数週間で1兆5000億元近くの起債が必要になる計算だ。調達された資金は8月末までに実際に使われることになる。

アナリストによると、高速道路や鉄道、空港といった従来のインフラ投資に比べ、リターンがずっと高い第5世代(5G)移動通信システムや人工知能(AI)などの関連インフラ拡充に向けて、投資が振り向けられる可能性があるという。

実際、国務院は31日、新しい種類のインフラとエネルギーの開発プロジェクトを承認したと説明した。

インフラ投資拡大は中国政府が景気テコ入れに際して打ち出す典型的な政策となっているが、過去の投資が数多くの役に立たない巨大施設も生み出してきた面もある。ただ今は政府の「ゼロコロナ政策」で息も絶え絶えの経済を支える緊急性が高まっている。李克強首相は先週、前倒しで政策対応する必要を改めて訴え、第2・四半期の成長率を何としても前年比プラスにする意向を明らかにした。

多くの民間エコノミストは、第2・四半期成長率は2020年第1・四半期以来のマイナスになると予想している。

<追加対策が不可欠>

中国政府がゼロコロナ政策を修正する気配は見当たらない。各都市でロックダウン(都市封鎖)が解除されようとしているが、今後再び感染が拡大すれば規制措置が再導入されるリスクがある。つまり数カ月以内に追加経済対策は不可欠になるというのがアナリストの見立てだ。

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一方、複数の政策アドバイザーやシンクタンク関係者は、中央政府が特別国債を発行して新型コロナウイルスで傷を負ったセクターを支援し、年後半のインフラ投資を持続させるべきだとの主張を強めている。

華夏新供給経済学研究院の賈康所長は「われわれは(特別国債の発行を)積極的に準備すべきで、その規模は2020年当時と同程度でなければならない」とロイターに語った。政府が年間成長目標を達成する上で重大な試練に直面しており、少なくともその試練に立ち向かう必要があると強調した。

中国政府が掲げる今年の成長率目標は5.5%前後。しかし多くのエコノミストは、目標実現は遠のきつつあるとみている。

シンクタンクの1つ、チャイナ・ウエルスマネジメント50フォーラムは、年間で5%近い成長を達成するには下期の6.5%成長が必須となり、そのために2兆元前後の特別国債を発行すべきだと提唱した。

今年は習近平国家主席の3期目続投を正式承認する共産党大会を秋に控えているため、経済を安定成長軌道に戻そうとする当局の切迫感はいつも以上に高まっている。国盛証券の見通しでは、8月と9月に特別国債が1兆─1兆5000億元規模で発行される公算が大きいという。

政府系シンクタンク、中国社会科学院のシニアエコノミスト、ザン・ミン氏は、政府が財政赤字の対国内総生産(GDP)比目標を3.0─3.2%に引き上げるよう提言した。

政策決定に通じる複数の関係者によると、財政赤字目標の引き上げないし特別国債発行は全国人民代表大会(全人代)の承認が必要になる。一方、追加対策を講じる前に政策担当者が既存の対策の効果検証も求められるという。