UBS、クレディ・スイス買収で合意 主要中銀も側面支援

Reuters

発行済 2023年03月20日 06:31

更新済 2023年03月20日 14:36

[19日 ロイター] - スイスの金融大手UBSは、経営不安が強まっていた同業クレディ・スイスを30億スイスフラン(約32億3000万ドル)で買収すると発表した。主要中銀も緊急の流動性供給策などを打ち出して側面支援を行い、市場の動揺の沈静化に向け協調歩調を取った。

金融不安の拡大を恐れたスイス当局が主導して合意を取りまとめた。買収ではクレディ・スイスの株主が保有する同社株22.48株に対しUBS株1株を割り当てる。UBSは最大54億ドルの損失を引き継ぐ。

2008年のリーマン・ブラザーズ破綻以降で最大級となるはずだった銀行破綻がひとまず回避された。

クレディ・スイスでは20日、業務に混乱の兆候は見られないようだ。アジアの金融当局は市場の状況を注視しているとしているが、現時点では目立った動揺はないという。

アジア時間の金融市場では、買収発表直後こそは安心ムードが広がったが、影響波及や米地銀の脆弱さ、モラルハザードなどリスクへの警戒感は強い。

在ロンドンのANZのG3(主要3カ国)経済責任者、ブライアン・マーティン氏は「UBSによるクレディ・スイス買収で、政策当局者は最近の市場混乱に区切りを付けたい考えなのだろう」と話した。

買収は株式交換の形で実施。2023年末までに完了する見込み。

UBSのコルム・ケレハー会長はアナリストとの電話会見で「スイスにとって歴史的な日だ。率直に言うと、この日が来ないことを望んでいた」としつつ、「われわれが協議を開始したわけではないが、この取引はUBSの株主にとって財務上魅力的であると確信している」と述べた。

UBSのラルフ・ハマーズ最最高経営責任者(CEO)はまだ多くの詳細を詰める必要があると指摘。「われわれが答えられない疑問が依然としてあることを承知している」と語った。

ケレハー会長は記者会見で、クレディ・スイスの投資銀行部門を縮小すると説明。27年までに年間で約70億ドルのコスト削減を見込むとした。

クレディ・スイスは19日、UBSによる買収の一環としてスイス当局の指示の下、160億スイスフラン(172億4000万ドル)相当のAT1債(その他ティア1債)を無価値化すると発表し、債権者から怒りの声が上がった。

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<流動性支援>

スイス国立銀行(中央銀行)は、UBSとクレディ・スイスに1000億フラン(1080億ドル)の流動性支援を行うと発表した。

ECBはユーロ圏の銀行を支えるため、必要に応じ融資を行うと表明。スイス当局によるクレディ・スイスの支援は安定回復に「有益」だとした。「ユーロ圏の銀行部門は強固な資本・流動性の基盤があり、耐性がある」と指摘した。

米連邦準備理事会(FRB)と財務省もスイス当局による金融安定支援を歓迎すると表明した。

FRBはまた、ドルスワップ協定を通じた流動性供給でECB、イングランド銀行(英中銀)、スイス中銀、カナダ中銀、日銀と協調すると発表、連携して対応する姿勢を示した。

米中堅銀行のシリコンバレー銀行とシグネチャー・バンクが相次ぎ経営破綻して以来、金融市場に動揺が走り、米欧の当局が対応を余儀なくされた。

過去の不祥事で投資家や顧客の信頼が低下していたクレディ・スイスの株価は先週、25%急落。中銀から最大540億ドルの借り入れを行うと発表していた。

ECBは「いかなる場合もユーロ圏の金融システムに必要に応じ流動性を供給し、金融政策の円滑な効果波及を維持する政策措置がわれわれには十分備わっている」と強調した。