焦点:ユーロ等価が再び視野、原油高やイタリア財政懸念などで

Reuters

発行済 2023年10月05日 13:01

Yoruk Bahceli Dhara Ranasinghe

[ロンドン 4日 ロイター] - 原油高の再燃が欧州経済に打撃を与えていることや、イタリアの財政状況を巡る懸念がユーロの逆風となっており、ユーロ/ドルが再び等価(パリティー)まで下落するリスクが高まりつつある。

足元のユーロ/ドルは1.05ドル近辺と年初来最安値水準で、7―9月期で3%値下がり。年間ベースでも3年連続のマイナスとなる流れだ。

ユーロ安の大半は、米経済の底堅さや米10年国債利回り高騰を背景としたドルの幅広い上昇で説明がつく。

しかしユーロ側の要因、特に原油価格上昇に弱いという特性のため、既に低調な欧州経済がさらに下振れし、ユーロを押し下げる恐れも出てきた。

欧州連合(EU)域内で利用される石油製品の9割超は輸入されるだけに、ユーロは原油高に対して脆弱な通貨という面が際立っている。

ノムラのG10FXストラテジスト、ジョーダン・ロチェスター氏は「原油高はユーロ圏の交易条件を圧迫し、もし1バレル=100ドルを超えて110ドルに達するなら、ユーロが等価まで売られるのを避けるのは難しくなる」と述べた。

主要産油国が減産方針を維持する環境で、原油価格は7―9月だけでも約30%上昇し、先週は98ドルに迫った。バークレイズなど複数の銀行は、数カ月中に100ドルの大台に達すると見込んでいる。

こうした中でノムラは、年末までにユーロ/ドルは1.02ドルまで軟化すると予想する。足元からはさらに3%の下落だ。

モルガン・スタンレーのチーフ欧州エコノミスト、イェエンス・アイゼンシュミット氏は、ユーロ圏がエネルギー面のショックに加え、米国よりも地政学リスクの影響度が大きい点を挙げ、競争力が損なわれてユーロの長期的見通しを悪化させると警告した。

モルガン・スタンレーはユーロ/ドルの等価は想定していないが、1.03ドルまで売られるとみている。

欧州中央銀行(ECB)は今のところ、原油高がもたらす輸入コスト増大とユーロ相場についてそれほど大きな心配はしていない。

ただ昨年、ユーロが20年前の導入以来初めて対ドルで等価になった際には、物価への影響を踏まえて為替レートを注視する姿勢を見せた。

<イタリア問題>

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INGの通貨ストラテジスト、フランチェスコ・ペソレ氏から見ると、イタリアを取り巻く状況も警戒サインになる。先週にはイタリア国債のドイツ国債に対する利回りのプレミアムが200ベーシスポイント(bp)に到達し、これは同プレミアムの上昇に伴ってユーロ売りが進むという相関関係が高まる節目だという。

ペソレ氏は「イタリア国債の地合いが大きく悪化し、ECBが迅速に動いて投資家の不安を和らげない場合、ユーロ/ドルの下値リスクは1.00―1.02ドルの範囲に広がる」と指摘した上で、堅調な米国の経済指標と米連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢もそうした展開をもたらす重要な要素だと付け加えた。

バンク・オブ・アメリカのグローバルG10FX戦略責任者アタナシオス・バンバキディス氏は、米国で失業率が上がって物価が下振れればドルにマイナスだが、米経済の勢いが弱まっても物価が高止まりするなら、ユーロ/ドルは等価になる事態もあり得るとの見方を示した。

投機ポジションも、ユーロにとって厳しい状況だ。投資家はしばらく前からユーロ高に賭けるポジションを構築し、直近で買い持ち規模が130億ドル相当に膨れ上がっているので、巻き戻しが加速すればユーロ安に拍車がかかりかねない。