以下は、フィスコソーシャルレポーターの個人ブロガー三竿郁夫氏(ブログ「JapanInside Thailand -真の日タイ連携を目指して-」を運営)が執筆したコメントです。
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「”経済回廊”と”一帯一路”プロジェクトは実現するか?」
アジアでは、東南アジアの“経済回廊”の大きなインフラプロジェクトが、さらに中国ではAIIBにからめて“一帯一路”の70を超える国を巻き込む壮大な経済圏プロジェクトが動き始めている。
かつて、日本でも1972年に列島改造論が発表され、日本を網羅した新幹線マップができた。
45年経った今、その地図の70-80%ほどの新幹線が現実のものとなった。
評価両論あるが、日本の輸送インフラの実現に実業家宰相田中角栄の功績は大きい。
そして、近年も九州・北海道新幹線のみならず、イギリス・インド他の海外でも日本の培った新幹線ビジネスが動き出し、継続的な経済効果をもたらしている。
各業界でアジア全体を巻き込むグローバルなプロジェクトが、今後のアジア経済を牽引することは間違いないので、いかに日本がアジア経済をリードできるか、将来を見越した賢明な国策と、産官の連携が必要である。
AEC元年となった2016年には、東南アジアの”経済回廊”に関連したニュースが多くあった。
注目すべきニュースをあげてみる。
1.以前より上海とシンガポールを結ぶ陸送のSS7000プロジェクトを推進してきた日本通運 (T:9062)は、メコン地域のグローバルな物流の重要性・複雑性を考慮し、12月「グローバル・ロジスティクス・イノベーションセンター」(GLIC)をシンガポールに新設した。
2.アジア進出に遅れをとったマツモトキヨシ (T:3088)は、慎重に戦略を立て、中国での越境ECビジネスを開始すると同時に、AECを睨んでタイに最初の海外拠点をつくり、着実に店舗を増やしていく計画である。
3.アジアの高速鉄道計画の動きからも目が離せない。
ベトナムの新幹線計画が挫折した後、近年では中国の売り込み攻勢に押されていた。
しかし、今年中国の新幹線の受注後のキャンセルが相次ぎ、日本の新幹線は再び注目されている。
インドネシアは、昨年ジャカルタ-バンドン間の高速鉄道の発注先として中国を選んだが、多くの問題に直面している。
昨年のインドのムンバイ-アーメダバード間の高速鉄道の日本政府との合意に続き、タイも今年、バンコク-チェンマイ間の日本の新幹線導入の覚書をかわした。
日立 (T:6501)、東芝 (T:6502)、東洋電機 (T:6505)、東鉄工業 (T:1835)、川崎重工 (T:7012)、日本車輌製造 (T:7102)、東日本旅客鉄道 (T:9020)等の新幹線関連会社のビジネスにとっては追い風である。
一方、中国が3年前から提唱している壮大な“一帯一路”プロジェクトに関連した注目ニュースも取り上げてみる。
1.中国政府は、中国企業による海外投資や、アジアから欧州に連なる大規模経済圏”一帯一路”構想を支援するための総額1500億元(約217億9000万米ドル)規模のファンドを立ち上げたと、一部欧米系メディアで報じられた。
2.9月北京を訪れた経団連の訪中団は、副首相と会談。
11月には、経団連榊原会長が再度北京を訪れ、中国国際経済交流センターとの会合が開かれた。
貿易、金融、イノベーション、インフラ、エネルギー、“一帯一路”の構築に関連する重要プロジェクトや環境保護といった地球規模課題の解決についても議論された。
3.日立製作所 (T:6501)は、中国での売上高を2021年度に16年度見通し比7割増まで引き上げ、中国での研究員も7割増の方針だ。
2016年、日立建機 (T:6305)やコマツ (T:6301)の中国ビジネスが減速したが、長期的には、“一帯一路”プロジェクトに商機が見出せるだろう。
“一帯一路”プロジェクトを中国の野心の現れと敬遠する国や企業もあるが、東南アジアの“経済回廊”プロジェクトと相まって、将来のアジア経済発展を目指すグローバル戦略としての大義のある戦略であり、両プロジェクトに対する日本の官民のより積極的なパートナーシップが期待される。
執筆者名:三竿郁夫 IA工房代表
ブログ名:「Japan Inside Thailand -真の日タイ連携を目指して- 」
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