アングル:AI基盤のデータセンター、「水の浪費」と中南米住民が反旗

Reuters

発行済 2023年10月01日 09:22

David Feliba

[ブエノスアイレス 26日 トムソン・ロイター財団] - ウルグアイのラカジェポー大統領は、今回の干ばつが最悪だった時期に首都モンテビデオの小学校を訪問した。その際に、小学生から思いがけない質問をぶつけられた。「なぜ水はこんなに塩辛いのですか」──。

大統領の答えは「雨が降るのを待つしかありません。水はどうしても必要なもののためだけに取っておく必要があります」というものだった。

ウルグアイは厳しい干ばつに見舞われ、モンテビデオの一部地域では汽水域で採取した塩分を含む水を混ぜて給水していた。最近の降雨で給水事情は改善している。

とはいえ、ペットボトル入りの飲料水を買うだけの余裕がない市民の多くは、米アルファベット傘下のグーグルが打ち出した、サーバーの冷却用に1日で数百万リットルもの水を消費するデータセンターの建設計画に怒りを募らせている。

共和国大学の社会学者、ダニエル・ペニャ氏は「これらの企業は大量の水を消費する。この水は私たちのために蓄えてあるのだ」と指摘。「今回は干ばつの影響もあり、何者かに銀行口座を空にされるようなものだ。蓄えがなくなってしまう」と話した。

グーグルは中南米で2番目となるデータセンター建設のため、ウルグアイ南部カネロネス県に土地を取得した。既に2015年にチリの首都サンティアゴ郊外に中南米初のデータセンターを開設しており、需要の増加に対応するため、3年後に規模を3倍に拡大する方針を示している。

<水資源の浪費>

グーグルの持続可能性に関するデータによると、同社のデータセンター20カ所余りが2022年に消費した水量は約52億2000万ガロン(198億リットル)。1日当たりでは1400万ガロン(5300万リットル)余りに上る。米国環境保護局の最新の推計によると、これは米国民約17万5000人分の消費量に相当する。

データセンターの水消費量は、ウルグアイの主要産業であるパルプ・製紙などに比べれば、はるかに少ない。しかし、気候変動により干ばつの頻度と深刻さが増しているため、水資源は需給がますます逼迫している。

近年におけるインターネット利用の急増で、世界中でデータセンター新設の需要が加速。建設地を巡る競争が激化し、水など資源の利用に対する懸念が高まっている。

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新型コロナウイルスのパンデミックがインターネットの利用、特に映像の利用を急拡大させ、それがデータセンターの成長を支えている。人工知能(AI)や自動運転などの新技術で、成長に拍車が掛かる可能性もある。

グーグルのカネロネス県でのデータセンター建設計画は、ユーチューブ、Gメール、検索など同社のインターネットサービスに対する需要増に対応するものだ。

昨年にペニャ氏が情報公開制度を使って入手したデータによると、グーグルのデータセンターは、当初計画では1日当たり760万リットル(約200万ガロン)の水を使用する予定だった。これはモンテビデオ市民5万5000人の1日の消費量に相当する。同市の人口は140万人。サーバー冷却に使用される水の大半は蒸発し、他の用途に利用できない。

首都郊外の貧困地区で子どもたちに食事を提供する支援施設を営むファビアナ・モリナさん(50)は、限られた水資源を巡る競争の激化で、貧困層が矢面に立たされるのではないかと心配している。「グーグルが使用する760万リットルは、まるまる浪費だ」と話す。

ウルグアイ産業省によると、グーグルは当初の計画を撤回し、エネルギーと水の消費を抑える方向で代替案を練っている。

グーグルの関係者はトムソン・ロイター財団の取材に、このプロジェクトはまだ検討段階で、環境認可を受ける必要があると述べた。

<世界各地で反発>

データセンター建設に対する反発は、世界各地で起きている。

グーグルがチリで計画している同国で2番目となるデータセンターの建設を巡っては、地元住民と当局が2020年に環境面の問題があるとして、正式に訴訟を起こした。

グーグルは設備の冷却方式の変更を約束したが、プロジェクトは保留となっている。

チリではグーグルのセンターに近いキリクラで米マイクロソフトが計画しているデータセンター建設計画も同様の反対に遭い、承認手続きが遅れている。

ただ、マイクロソフトは近隣の水源から取水しないことを約束する追加修正案を提出し、ほとんどの地元自治体から承認を獲得。プロジェクトは前進している。

ハイテク企業は、データセンターがもたらす経済効果を強調している。グーグルはチリのデータセンターが必要とする投資は2億9000万ドルに上り、同国の国内総生産(GDP)の押し上げに貢献すると主張した。