■強み、競合と事業リスク
(1)強みと競合
EMシステムズ (T:4820)の強みの1つとして、調剤薬局向けのレセプトコンピュータが普及し始めた初期段階においてハードのコストが高いオフコンではなく、安価なパソコンをベースとしたことで、オフコンのシステム導入に比べ導入コストが低かったことが優位に働き、調剤薬局市場で約30%の高いシェアを確保する原動力として働いた。
高いシェアを背景にユーザーのあらゆるニーズを掌握でき、製品開発に反映させることが可能。
加えて、業界内でいち早く売切り制から初期導入費を抑えた従量課金制を採用したため、同業他社製品に比べ価格競争力がある。
さらに、同業他社が販売代理店制を採っているのに対して同社は直販が主体の製販一体体制であることもユーザーサポート力の高さを評価される要因として働いている。
また、同社の免震性・セキュリティレベルの高いデータセンターにデータを蓄積できる仕組みになっていることも強みとして挙げられる。
調剤システムの競合企業はパナソニック ヘルスケア(株)(旧三洋電機(株))、(株)三菱電機ビジネスシステムなど。
なお、電子薬歴システムでは、(株)グッドサイクルシステム、ハイブリッジ(株)、(株)ユニケソフトウェアリサーチなどと競合している。
医科システムに関しては、後発であるため市場シェアは現時点で2.7%と低いものの、その弱点を逆手に取り、同業他社製品以上の機能を同社オリジナルのMRN(Medical Recepty NEXT)は保有する設計になっている。
一方、連結子会社化した(株)ユニコン製のユニメディカルは操作性に優れるという特徴があり、これらを併せた品ぞろえという点で診療所・クリニックのあらゆる医師のニーズに対応できるようになっている点が強みだ。
競合企業は、電子カルテに関してはパナソニック ヘルスケア(株)、(株)ラボテック、ビー・エム・エル (T:4694)、(株)ダイナミクス、富士通 (T:6702)、日立メディカルコンピュータ(株)、(株)ユヤマなど。
レセコンではパナソニック ヘルスケア(株)、日本医師会総合政策研究機構、日立メディカルコンピュータ(株)など。
介護システムの競合企業としては、(株)ワイズマン、エヌ・デーソフトウェア (T:3794)、エス・エム・エス (T:2175)の介護システム開発企業のほか、富士通、(株)日立システムズ、内田洋行 (T:8057)など大手企業が挙げられるが、実際バッティングするのは(株)ワイズマン、エヌ・デーソフトウェア (T:3794)、エス・エム・エス (T:2175)の3社のケースが大半。
調剤薬局及び医科のデータを保有していることにより、ほぼ現状の設備のままEHR(医療情報の連携)が可能である。
今後の医療介護連携に生かすことができるほか、厚生労働省がガイドラインを打ち出し、実施解禁となった電子処方箋への対応も同業他社よりも少ない設備投資で可能となっている。
加えて、診療所、薬局、介護サービス事業者へシステムを独自に提供でき、2017年1月にリリース予定の「医療介護連携ソリューション」でそれらのシステムを連携するソリューションを提供できる唯一の事業者になることは、同社の大きな強みとして働くと考えられる。
(2)事業リスク
主要な事業リスクとして、1)医療保険制度改正とそれに伴うプログラム変更、2)新製品の開発に伴う想定以上のコスト負担の可能性、などを挙げることができる。
まず、医療保険制度改正は少子高齢化対応により継続して実施されており、薬価差益の減少、患者個人負担額の増加による来院患者数の減少等、改正の内容や規模により、主要ユーザーである調剤薬局や診療所のシステム投資意欲の減退を招く可能性がある。
加えて、大幅な医療保険制度改正が行われ、ソフトウェアのプログラムに大量の修正の必要性が生じた場合、そのコスト負担が業績にマイナス影響を与える可能性がある。
さらに、同社は他社との競争を勝ち抜くために、インターネットを利用した調剤レセプト支援システムのネットワークシステムを始め、クリニック・診療所向けのレセコン融合型電子カルテシステムやオプションシステムの開発に注力している。
これらの製品がユーザーの満足度を充足できない場合、機能強化のためのコスト負担が収益のマイナス要因となる可能性があるほか、市場シェア低下の要因となり、業績に多大なインパクトを与える可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正 )
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