■事業概要
1. 主要製品
Mipox (T:5381)の主力事業は、様々な製品や部品を研磨するために使われる研磨フィルム、研磨紙、液体研磨剤等の製造である。
それ以外には、研磨機械装置の設計と販売、機能性フィルムの製造や研磨加工などの受託も行っている。
セグメントとしては、製品事業と受託事業として開示されており、2017年3月期の製品事業売上高は6,219百万円、受託事業売上高は190百万円であった。
また決算説明会資料で開示されている製品別売上高(2017年3月期)は、研磨フィルム3,292百万円(売上構成比51.4%)、液体研磨剤205百万円(同3.2%)、研磨装置394百万円(同6.1%)、その他188百万円(同2.9%)、受託事業190百万円(同2.9%)、日本研紙製品2,141百万円(同33.4%)となっている※。
※決算短信での開示数値と説明会資料での開示数値は一部異なる。
また日本研紙の売上高は第2四半期からの9ヶ月分。
受託事業は顧客の注文に応じて同社が機能性フィルムの製造や研磨加工などを行うもので、数個の小ロットから大ロットまで幅広く対応している。
売上高としては加工賃だけが計上されるが、同社の工場の機械類の稼働率が上がるので、受注ロットによって利益率は変動する。
2. 用途別売上高
また各製品の主な向け先業種(用途別売上高、2017年3月期)は、ハードディスク1,261百万円(同19.7%)、光ファイバー910百万円(同14.2%)、半導体713百万円(同11.1%)、液晶パネル139百万円(同2.2%)、自動車439百万円(同6.8%)、磁気151百万円(同2.4%)、その他496百万円(同7.7%)、受託製造160百万円(同2.5%)、日本研紙製品2,141百万円(同33.4%)となっている。
粗利率はハイテク向けが比較的高く、汎用品は低い。
(1) ハードディスク用
ハードディスク(メディア)の表面を研磨するために使う。
特に、ハードディスク製造の最終処理工程で使用される精密研磨フィルムは、世界シェア100%と同社が独占している。
(2) 光ファイバー用
光ファイバーコネクタの接続端面の研磨に使われる。
主に北米、欧州、中国市場に販売する。
(3) 半導体用
主に1つ目は、シリコンウェハーの表面ではなくエッジを研磨するために使われる。
2つ目は、半導体の検査時に使われるプローブカードのクリーニング用に使われる。
(4) 液晶パネル用
生産工程で発生する削りかすや樹脂の除去に使用される。
(5) 自動車用及び磁気用
自動車のエンジンやトランスミッションのシャフトをはじめ、自動車部品の研磨に使われる。
(6) 磁気用
主に記録用磁気テープの表面の研磨に使用される。
(7) その他
ハイテク関連以外や一般消費者向け製品が含まれる。
(8) 日本研紙製品
耐水研磨紙、研磨布、ファイバーディスク製品、ファインダイヤ製品などで、どちらかと言えば一般研磨分野の製品が多い。
3. 地域別売上高
日本研紙を含めた同社の製造拠点は現時点で国内3ヶ所(山梨、京都、福山)、海外3ヶ所(インド、マレーシア、中国)となっており、一方で営業拠点(本社、製造拠点との重複を含む)は国内8ヶ所、海外12ヶ所となっている。
多くの顧客企業がハイテク関連(グロバール企業)であることから、地域別売上高(2017年3月期)は、日本2,990百万円(売上構成比46.7%)、中国816百万円(同12.7%)、マレーシア650百万円(同10.1%)、その他1,952百万円(同30.5%)となっている。
4. 市場シェア・競合
同社は多くの種類の研磨関連製品を作っているが、個々の製品別では正確な統計はない。
また主力製品であるハイテク用研磨フィルム等の顧客の多くはグローバル企業であることから、市場としては世界全体の市場を見る必要がある。
同社の推定では、世界の研磨剤市場は約4,000億円だが、同社を含めた日本メーカーのシェアは10%未満である。
世界市場では、Norton(現在はSaint-gobain傘下)、3M(スリーエム)、中国企業などが比較的高いシェアを持っている。
国内市場では、三共理化学(株)、KOVAX((株)コバックス)、理研コランダム (T:5395)、日本研紙が4大メーカーと言われていたが、同社がM&Aにより日本研紙を傘下に収めたことで、現在は同社も国内4大メーカーの一角と言える。
ただし、上記の国内メーカーの多くは一般汎用品の売上高比率が高く、ハイテク製品の比率は低い。
正確な数字は明らかではないが、同社のハイテク製品におけるシェアは高く、多くの製品で50%を超えているようだ。
ハードディスクポリッシング用などのように100%近いシェアの製品もある。
このように同社のシェアが高いのは、同社の技術力が高いことに加え、顧客からの信頼が厚いことが主要因だが、市場全体が小さい(ニッチ市場である)ために他社の参入が少ないことも高シェアの理由の1つだろう。
5. 特色・強み
(1) 高い塗布の技術力
同社の最大の強みは古くから培われた塗布の技術だ。
研磨材の調合における技術力も高いが、これらの研磨材を塗布して微細加工に適した研磨フィルムを作れることは同社の特色であり強みと言える。
研磨材がフィルム状で提供されることで、多くのハイテク製品や微細製品の研磨を可能にしている。
同業他社が、この「塗布技術」に追い付くことは容易ではなく、これによって同社は高い市場シェアと粗利率を維持していると言える。
(2) 豊富な製品ラインアップとワンストップソリューション
今までの同社の主力製品は主にハイテク製品向けの研磨フィルム・液体研磨剤であり、市場全体の中ではハイエンドであり規模の小さな部分であった。
しかし今回、どちらかと言うと一般研磨分野製品を得意とする日本研紙がグループに加わったことで、ハイエンドから一般研磨分野まで製品ラインアップが充実した。
また同社は受託事業も行っており、少量の注文であっても受けることを基本方針としている。
これによって顧客は、同社に行けばすべての製品を揃えることができるだけでなく、少量の研磨加工も行ってもらえるのだ。
つまり、ワンストップソリューションを可能にしており、これが顧客との信頼関係を厚くしている。
これも同社の強みと言えるだろう。
(3) 筋肉質で強固な組織
また社内で徹底した情報共有がされているのも同社の特色であり、強みだろう。
一部の機密情報を除いて、ほとんどすべてのデータや情報が全社員に知らされ共有されている。
これによって無駄な紙媒体や会議等が減り、意思決定が迅速になっている。
売上高の規模こそ小さいが、組織としては非常に筋肉質で強固であると言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
1. 主要製品
Mipox (T:5381)の主力事業は、様々な製品や部品を研磨するために使われる研磨フィルム、研磨紙、液体研磨剤等の製造である。
それ以外には、研磨機械装置の設計と販売、機能性フィルムの製造や研磨加工などの受託も行っている。
セグメントとしては、製品事業と受託事業として開示されており、2017年3月期の製品事業売上高は6,219百万円、受託事業売上高は190百万円であった。
また決算説明会資料で開示されている製品別売上高(2017年3月期)は、研磨フィルム3,292百万円(売上構成比51.4%)、液体研磨剤205百万円(同3.2%)、研磨装置394百万円(同6.1%)、その他188百万円(同2.9%)、受託事業190百万円(同2.9%)、日本研紙製品2,141百万円(同33.4%)となっている※。
※決算短信での開示数値と説明会資料での開示数値は一部異なる。
また日本研紙の売上高は第2四半期からの9ヶ月分。
受託事業は顧客の注文に応じて同社が機能性フィルムの製造や研磨加工などを行うもので、数個の小ロットから大ロットまで幅広く対応している。
売上高としては加工賃だけが計上されるが、同社の工場の機械類の稼働率が上がるので、受注ロットによって利益率は変動する。
2. 用途別売上高
また各製品の主な向け先業種(用途別売上高、2017年3月期)は、ハードディスク1,261百万円(同19.7%)、光ファイバー910百万円(同14.2%)、半導体713百万円(同11.1%)、液晶パネル139百万円(同2.2%)、自動車439百万円(同6.8%)、磁気151百万円(同2.4%)、その他496百万円(同7.7%)、受託製造160百万円(同2.5%)、日本研紙製品2,141百万円(同33.4%)となっている。
粗利率はハイテク向けが比較的高く、汎用品は低い。
(1) ハードディスク用
ハードディスク(メディア)の表面を研磨するために使う。
特に、ハードディスク製造の最終処理工程で使用される精密研磨フィルムは、世界シェア100%と同社が独占している。
(2) 光ファイバー用
光ファイバーコネクタの接続端面の研磨に使われる。
主に北米、欧州、中国市場に販売する。
(3) 半導体用
主に1つ目は、シリコンウェハーの表面ではなくエッジを研磨するために使われる。
2つ目は、半導体の検査時に使われるプローブカードのクリーニング用に使われる。
(4) 液晶パネル用
生産工程で発生する削りかすや樹脂の除去に使用される。
(5) 自動車用及び磁気用
自動車のエンジンやトランスミッションのシャフトをはじめ、自動車部品の研磨に使われる。
(6) 磁気用
主に記録用磁気テープの表面の研磨に使用される。
(7) その他
ハイテク関連以外や一般消費者向け製品が含まれる。
(8) 日本研紙製品
耐水研磨紙、研磨布、ファイバーディスク製品、ファインダイヤ製品などで、どちらかと言えば一般研磨分野の製品が多い。
3. 地域別売上高
日本研紙を含めた同社の製造拠点は現時点で国内3ヶ所(山梨、京都、福山)、海外3ヶ所(インド、マレーシア、中国)となっており、一方で営業拠点(本社、製造拠点との重複を含む)は国内8ヶ所、海外12ヶ所となっている。
多くの顧客企業がハイテク関連(グロバール企業)であることから、地域別売上高(2017年3月期)は、日本2,990百万円(売上構成比46.7%)、中国816百万円(同12.7%)、マレーシア650百万円(同10.1%)、その他1,952百万円(同30.5%)となっている。
4. 市場シェア・競合
同社は多くの種類の研磨関連製品を作っているが、個々の製品別では正確な統計はない。
また主力製品であるハイテク用研磨フィルム等の顧客の多くはグローバル企業であることから、市場としては世界全体の市場を見る必要がある。
同社の推定では、世界の研磨剤市場は約4,000億円だが、同社を含めた日本メーカーのシェアは10%未満である。
世界市場では、Norton(現在はSaint-gobain傘下)、3M(スリーエム)、中国企業などが比較的高いシェアを持っている。
国内市場では、三共理化学(株)、KOVAX((株)コバックス)、理研コランダム (T:5395)、日本研紙が4大メーカーと言われていたが、同社がM&Aにより日本研紙を傘下に収めたことで、現在は同社も国内4大メーカーの一角と言える。
ただし、上記の国内メーカーの多くは一般汎用品の売上高比率が高く、ハイテク製品の比率は低い。
正確な数字は明らかではないが、同社のハイテク製品におけるシェアは高く、多くの製品で50%を超えているようだ。
ハードディスクポリッシング用などのように100%近いシェアの製品もある。
このように同社のシェアが高いのは、同社の技術力が高いことに加え、顧客からの信頼が厚いことが主要因だが、市場全体が小さい(ニッチ市場である)ために他社の参入が少ないことも高シェアの理由の1つだろう。
5. 特色・強み
(1) 高い塗布の技術力
同社の最大の強みは古くから培われた塗布の技術だ。
研磨材の調合における技術力も高いが、これらの研磨材を塗布して微細加工に適した研磨フィルムを作れることは同社の特色であり強みと言える。
研磨材がフィルム状で提供されることで、多くのハイテク製品や微細製品の研磨を可能にしている。
同業他社が、この「塗布技術」に追い付くことは容易ではなく、これによって同社は高い市場シェアと粗利率を維持していると言える。
(2) 豊富な製品ラインアップとワンストップソリューション
今までの同社の主力製品は主にハイテク製品向けの研磨フィルム・液体研磨剤であり、市場全体の中ではハイエンドであり規模の小さな部分であった。
しかし今回、どちらかと言うと一般研磨分野製品を得意とする日本研紙がグループに加わったことで、ハイエンドから一般研磨分野まで製品ラインアップが充実した。
また同社は受託事業も行っており、少量の注文であっても受けることを基本方針としている。
これによって顧客は、同社に行けばすべての製品を揃えることができるだけでなく、少量の研磨加工も行ってもらえるのだ。
つまり、ワンストップソリューションを可能にしており、これが顧客との信頼関係を厚くしている。
これも同社の強みと言えるだろう。
(3) 筋肉質で強固な組織
また社内で徹底した情報共有がされているのも同社の特色であり、強みだろう。
一部の機密情報を除いて、ほとんどすべてのデータや情報が全社員に知らされ共有されている。
これによって無駄な紙媒体や会議等が減り、意思決定が迅速になっている。
売上高の規模こそ小さいが、組織としては非常に筋肉質で強固であると言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)