■中長期の成長戦略
1. 成長戦略の全体像
会社概要の項で述べたところと一部重なるが、サイネックス (T:2376)の経営理念は“地方創生のプラットフォームを担う『社会貢献型企業』へ”というものだ。
この背景には衰退が顕著な地方が活力を取り戻すことに貢献しようという強い使命感がある。
具体的な枠組みとして同社は「官民協働事業」の推進に取り組んでいる。
同社の事業やその収益モデルはこの視点で貫かれており、同社にとって成長戦略とは経営理念の実現そのものと言える。
同社は、経営理念をより具体的事業に落とし込んだものとして、『地方創生プラットフォーム構想』を打ち出している。
同社は創業以来60年以上にわたり地方とともに歩み、750近い自治体と共同出版事業で提携してきたことを始め、様々な分野・事業で自治体や地域経済と深いつながりの中で地方創生のための幅広い知識や経験を培ってきた。
それらを生かして官民協働による地域イノベーションの創出を目指すというが構想の趣旨だ。
同社は地域イノベーションの創出により“産業振興”や“公共革新”などの実現を目指している。
産業振興は言うまでもなく地域経済の活性化につながり、公共革新は地方財政の再建につながるものだ。
これらの実現は容易ではないが、同社では産業振興に向けては地方自治体と地域経済の活性化に資する新たな事業領域の構築を目指している。
また公共革新については、民間の経営手法・マネジメントの導入によるコスト削減や公共サービスの収益事業化を目指している。
さらに、こうした取り組みを支援・加速させるべく、ICTを活用した新サービス・事業や、トータルプロモーションといった新たな取り組みなどを逐次スタートさせている。
『地方創生プラットフォーム構想』の活動領域は、1)公共の領域、2)地域経済の領域、3)公共と地方経済の両方にまたがる領域、の3つに分類されている。
1)公共の領域は『わが街事典』やジャンル特化型情報誌、ふるさと納税、地方自治体の広報活動支援のためのデジタルサイネージ、シティプロモーション、クラウド型アプリ、CMSなどが含まれる。
2)地域経済の領域は『Nasse』や特産品や観光などのEC事業、DMソリューションやポスティングが含まれる。
3)公共と地方経済の両方にまたがる領域は地域別電話帳『テレパル50』と健康増進ヘルスケア事業だ。
同社は自身が有するリソースを生かすとともに、それぞれの領域に精通した企業とも協業しながら、地方創生プラットフォーム企業として地方の自治体と地域経済をしていく方針だ。
地方創生プラットフォーム構想の活動領域と同社の事業セグメントとは、縦横に混じり合った形となっている。
それを整理すると以下のようになる。
同社の地方創生プラットフォーム構想を中核とする成長戦略の特長は、自治体支援、地域支援の姿勢が徹底していることにあると弊社では考えている。
外部分析者あるいは投資家の目線からすれば、収益チャンスを見過ごしているように見えるケースもあるというのが正直な感想だ。
しかしながら同社の姿勢が自治体支援、地域支援に徹しているからこそ、官民協働の機会を(地域的にも事業領域的にも)幅広く獲得できているのも事実だ。
同社自身は上場企業として株主リターンの最大化にも大きな責任感を持って取り組んでいるのは疑いない。
リターンの獲得を急ぐのではなく、自治体支援・地域経済支援を通じて関係をより深く強固なものにした上で、着実に収益を拡大させていくというのが同社の成長戦略の真骨頂ではないかと弊社では考えている。
主な事業セグメント、支援事業の詳細及び進捗状況は以下のとおりだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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