アシックスの「パタハラ」裁判が12日に初弁論、労働者の権利に注目

Reuters

発行済 2019年09月11日 18:57

アシックスの「パタハラ」裁判が12日に初弁論、労働者の権利に注目

[東京 10日 ロイター] - 育児休業明けに不当な配置転換などの嫌がらせを受けたとして、スポーツ用品大手アシックス (T:7936)の男性社員(38)が提訴した訴訟の審理が、12日から東京地裁で始まる。日本における男女の平等や、労働者の権利にスポットライトを当てるケースとして注目されている。

男性は2015年と18年に育児休業を取得。男性によると、最初の育休からの復帰後、物流子会社への出向を命じられたという。

男性はロイターのインタビューで「サラリーマンを40年くらいやることを考えると1年、2年休んだところで、と考えた」「父親としてのキャリアを優先したかった」と語った。

男性は匿名を条件にインタビューに応じた。ツイッターでは、2人の子どもそれぞれにつき1年の休業を取得したのは身勝手などと批判的な声も少なくない。

男性はロイターに「もちろん権利はあるので取りたい、でも取れない人、声を上げられない人はたくさんいる」「誰かが声を上げなければ」と訴えた。

男性は以前は人事関係の仕事をしていたが、物流子会社では荷下ろしなどの肉体労働に従事することになった。男性が弁護士を介して会社と交渉したところ、デスクワークに戻ることが認められたが、社内規則の英訳など重要性のあまり高くない業務が与えられた。男性によると、こうした状況は2度目の育休明け以降続いているという。

アシックスの広報室はロイターに対して「これまで社員の代理人弁護士や、社員が加入した社外の複数の労働組合も交えて順次、誠実に交渉を続けてきたが、最終的な解決に至らず残念。今後は裁判の中で事実を明らかにしていきたいと考えている」と指摘。その上で「当社はダイバーシティの推進に力を入れており、妊娠・出産・育児の期間にも活躍できるよう、今後とも職場環境や支援制度の一層の充実に取り組む」とした。

育休を取った男性が不利益を被ったとする訴えは最近増えている。

三菱UFJモルガン・スタンレー(東京)では、元エクイティセールスマネジャーのグレン・ウッド氏が、育休からの復帰後にハラスメントを受けたとして提訴。カネカ (T:4118)では、育休明けの男性社員に転勤を命じたことを男性の妻がソーシャルメディアに投稿し、同社への批判が殺到した。