中国など高中所得国、融資「卒業」へ丁寧に議論=浅川・次期ADB総裁

Reuters

発行済 2019年12月02日 10:41

中国など高中所得国、融資「卒業」へ丁寧に議論=浅川・次期ADB総裁

[東京 2日 ロイター] - アジア開発銀行(ADB)の次期総裁に選出された浅川雅嗣前財務官は、ロイターのインタビューで、中国など高中所得国を融資対象から外していくに当たっては、所得基準のみならず国際資本市場からの資金調達などの基準も検討する必要があると述べた。融資プロジェクトの絞り込みや融資額の減額などについて、各国と丁寧に議論していくと話した。

ADBは2日、浅川氏が次期総裁に選出されたと発表した。中尾武彦総裁の後任として、2020年1月に就任する。

浅川氏は、所得が向上した国が融資対象から「卒業」する条件として、1人当たり国民総所得(GNI)が6795ドル到達という数値基準のみならず、国際資本市場からリーズナブルなコストで資金調達できているか、一定程度の経済発展段階に達しているかといった基準も満たす必要があると指摘した。18年の中国の1人当たりGNIは9470ドル。

ADBは11月、中国など高中所得国向けの貸出金利を引き上げることを決定した。浅川氏は、金利引き上げのみならず、融資プロジェクトの見極めや融資額の減額など、卒業に向けては段階があり「1つ1つ丁寧に加盟国と議論していかなければならない」と話した。中国が遠くない将来に融資対象から卒業するかとの質問には「議論次第だ」と答えた。

高中所得国を融資対象から外すことの是非を巡り、中尾氏が今年4月、中国への融資を続けることには意義があるとの認識を示す一方、麻生太郎財務相は同5月のADB年次総会で、高中所得国の卒業に向けて「具体的道筋をしっかりと議論していくべきだ」と述べている。

浅川氏は就任にあたり、1)貧困層への教育・就労支援、2)女性への教育と職業の提供、3)温暖化対策と成長の両立、4)質の高いインフラ投資――の4分野に注力する方針を示した。

浅川氏は、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)とADBとでは「本質的に性格は違う」と指摘。「コファイナンス(協調融資)を通じた国際機関どうしの協力関係を今まで以上に続けていきたい」と話し、協調融資に当たって環境配慮のガイドラインなど国際的にレベルの高いガイドラインが適用されれば「AIIBにとっても良いことだと思う」と述べた。